岡山県の焼きもの・虫明焼の歴史と陶工（陶芸家・作家）の解説
虫明焼について
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＊＊＊ 蓼純の虫明焼半可通 ＊＊＊
* * * たでじゅんのむしあけやきはんかつう * * *
「虫明焼について・蓼純の虫明焼半可通」の頁です。
虫明焼に関すること、歴史などを、虫明焼の陶工(陶芸家・作家)を中心に、お話しています。
私・蓼純（たでじゅん）が、今までに見たり聞いたりした資料、知識を紹介します。
広告を貼らない、他のホームページとリンクしない、商品の販売をしない。
そうすることで、だれにも干渉されない、純粋・公正な虫明焼のＨＰにしています。
虫明焼に関する書籍・資料は、できる限りチェックしています。
しかし、私・蓼純の思い違い、誤記など不備な点も あると思います。
品物の売買については、当然のことですが、自己責任で、お願いいたします ☆
このページから入られた方へ ； ホームは「虫明焼の栞」です。
前回に引き続き と、言っても一年前ですが・・・
前回は、生活雑器であった徳利のお話をいたしました。
好評だったわけではありませんが、今回も虫明焼の徳利の写真を見てください。
人形徳利は備前焼で多く作られていますが、これは虫明焼・森香洲作です。
虫明焼の人形徳利は、希少です。
ロクロ挽きした後に、本体を抑えて三角形にして人形（寿老人）を張り付けています。
淡い若草色の良い色に上がっています。
これは燗徳利一対です。
これも、虫明焼・森香洲作です。
薄手に造っていますので、手に取ると驚くほど軽いです。
絵付は白釉で白鷺、銅釉で樹木を描いていますが、
白鷺の絵が、焼成により少し熔け過ぎました ☆
虫明焼は高温で焼成するため、釉薬（ゆうやく）が熔け過ぎたり、
白色が飛んで発色しないことが多々あります。
それに、白色釉は虫明焼の土（粘土）と化学反応を起こすのか、あまり馴染みません。
白色釉の剥離が、よく起こります。
あっ、 現代の虫明焼の製法・原料では、そのようなことは絶対にありません。
古い虫明焼の話です ☆
香洲ですので、薄手に造っています。
徳利は、まだまだあるのですが、この徳利を最後にいたします。
首から肩にかけて上部のみ釉薬（ゆうやく）を掛けています。
したがって土（胎土）が多く露出しています。
いい土（粘土）を使っています。
それに、形が良いというか、手取りがいいですね。
そして、首が左側に少し傾いているのが愛らしいです。
あるいは、陶工（陶芸家・作家）が意図して傾かせたのでしょうか（？）
銘（印）は、央明（おうめい）印のみです。
徳利だけで酒盃を載せないのは片手落ちですので、酒盃の写真を載せてみます。
虫明焼・森香洲作の酒盃です。
正面（？）を、指で押さえてアクセントにしています。
これも、虫明焼・森香洲作の酒盃です。
鉄釉（銹絵）と白釉で絵付をしています。
この酒盃は、絵付けは有りません、虫明焼・森香洲作です。
この絵付は、梅に鶯（うぐいす）です。
虫明焼・森香洲作の酒盃です。
全部 香洲の酒杯になってしまいました ☆
虫明焼の酒盃も、まだまだ有りますが、今回はこの辺りで終わりにいたします。
次の更新は いつになるか分かりませんが、また いつか更新するつもりです ☆
なお、旧い回（バックナンバー）も、写真などを追加していますので、
お閑なときに ご覧いただければ幸いです。
以下は、Ｂａｃｋ ｎｕｍｂｅｒです。
ＵＰした写真はＢａｃｋ ｎｕｍｂｅｒでは、省略していたのですが、
全部ではありませんが、再度写真を貼ったり、加筆、修正、［追記］をしています。
このページもエラーが出たりしたので、Ｂａｃｋ ｎｕｍｂｅｒ 〔第１回〕から〔第５０回〕迄は、
むしあけやき/虫明焼の栞に移動しています。
〔第５１回〕 ２０１２．１０．０１
こんにちは、コスモスの咲く爽やかな季節になりましたね ☆
いま気付いたのですが、前回が「虫明焼について・蓼純の虫明焼半可通」の５０回でした。
そこで、第５０回を記念して抽選で一名様に、「虫明徳利ぐい呑セット」をプレゼントいたします。
当選確率は非常に高いです。分子は１ですが、分母も１に近いです ☆
**メルアドは、締切り経過のため削除しました**宛に、１０月１５日（月）までに送信してください。
件名欄に「虫明５０回」と書いて、郵便番号、住所、氏名の記入をお願いいたします。
記念品を送付後は、貴方の情報はすべて削除しますので、ご安心ください ☆
今回は、特にお話をする材料もないので、展示の紹介をしておきます ☆
「今月の抹茶碗」のページで、すでに案内しているのですが、
岡山・吉兆庵美術館で、
近代陶芸界の巨人たち ―北大路魯山人・金重陶陽・真葛香山―
と、いう企画展が開催されています。
日時は、平成２４年（２０１２年）９月７日（金）～１１月１８日（日）の間です。
時間は、午前１０時００分～午後５時００分
場所は、岡山市南区築港新町１丁目２４－２１
岡山・吉兆庵美術館は、岡山駅の近くに移転予定、と山陽新聞に載っていましたね。
次回か、次々回の真葛香山展のときは、移転しているのでしょうか。
私・蓼純の家からは、遠くなりますが、多くの方には交通の便が良くなります ☆
今回は、魯山人、陶陽、そして真葛香山と、三人の作品が展示されているわけですから、
いつもの真葛香山展よりは、真葛香山作品の展示が少ないのは仕方がないですね ☆
でも、渡り蟹水盤は、展示されています ☆
<写真は、真葛香山・渡り蟹水盤>
虫明焼も四点ありました。抹茶碗三点と、水指が一点です。
虫明焼は、最初（？）に展示されていました ☆
私・蓼純は、岡山・吉兆庵美術館の真葛香山展は、毎回行っていますが、
今までに展示されていなかったものが、いつも何点か展示されています。
今回展示のなかでは、鹿の香炉が一番良かったでしょうか ☆
<写真は、真葛香山・鹿香炉>
以下は、岡山・吉兆庵美術館のホームページ（ＨＰ）からの抜粋です。
岡山に伝わる伝統的な焼き物、備前焼と虫明焼。この二つの焼き物を鑑賞するにあたって、忘れては
ならない芸術家たちがいます。備前焼の里、伊部にやってきた北大路魯山人とイサムノグチ。
虫明焼の陶工たちの指導に当たった真葛香山。いずれも、当時の最先端の技術や感性を持って、
県外から岡山を訪れ、地元の作家たちに多大な影響を与えました。-----中 略----- 虫明焼は
備前国邑久町虫明村にあった備前藩の筆頭家老伊木家の庭の窯で焼かれていました。
明治元年（１８６８）、伊木忠澄は、虫明焼の指導のため京都から真葛香山を招きました。
明治３年まで、岡山に滞在した真葛香山は、虫明焼の陶工、森角太郎（号：葛雄）・森彦一郎（号：香洲）
父子などの今では虫明焼を代表する作家に陶技の指導を行い、虫明焼の発展に貢献しました。
本展では、桃山備前を復興させた備前焼の陶工・金重陶陽と北大路魯山人とのつながりと、虫明焼の
技術向上に貢献した真葛焼の名工、真葛香山の作品を紹介いたします。
（以上、岡山・吉兆庵美術館のＨＰから）
「蓼純Ｃｏｌｌｅｃｔｉｏｎ」のページには、真葛香山作の磁器染付三つ重ね盃をＵＰしました。
高台内に、「真葛製」と、釉銘(ゴスのサイン)があります。
虫明に滞在中の真葛香山作・磁器染付三つ重ね盃で、ほぼ間違いないと思います。
ただし、〔第３６回〕 〔追記〕 の三つ重ね盃には 庚午 於明浦 菊渓幽人 と書いていたが、
この盃には 於明浦、琴浦、虫明などと、虫明焼を表す語がありません。
したがつて、真葛香山作品には間違いありませんが、
虫明焼の真葛香山作である確率は１００％ではなく、９５％位だと思って、ご覧下さい。
外側はどれも、松の絵を染め付けていますが、内側に書いた漢字は、それぞれ違っています。
一つの盃には「月」、もう一つの盃は「花」、という漢字が入っています。
残り一つの盃が「雪」、ではなくて、なんと「戀」という漢字が入っています ☆
「恋」の旧字体です。画数が多くてややこしい字ですね。
「いとし、いとし、というこころ」 と、覚えたそうです ☆
今回はこれで終わりますが、「第５０回記念プレゼント」の応募、お待ちしています ☆
「第５０回記念プレゼント」に応募くださり、ありがとうございました。
思っていたよりは、多くの方に応募していただきました ☆
厳正なる抽選の結果、兵庫県高砂市に御住まいの方が当選となりました。
「むしあけ徳利ぐい呑みセット」を、送付させていただきました。
これを持ちまして、応募者全員のデータは、すべて消去いたしました。
今回当選されなかった方、今回応募されなかった方、またの機会に応募してくださいね ☆
〔また追記〕
「蓼純Ｃｏｌｌｅｃｔｉｏｎ」のページには、真葛香山作の磁器染付三つ重ね盃をＵＰしました。
と、お話いたしましたが、写真は既に削除していますので、再び下に載せました。
高台内に、「真葛製」と、釉銘(ゴスのサイン)があります。
外側はどれも、松の絵を染め付けていますが、
内側に書いた字は、それぞれ違っています。
盃の底に 「月」、「花」、そして「戀（恋）」という漢字が入っています。
「雪」、「月」、「花」、 ではなく、
「月」、「花」、「戀（恋）」、
徒然草 「花は盛りに」 からでしょうか（？）
真葛香山も虫明滞在中は、二十代半ばです。
京都に残してきた娘が、忘れられなかったのでしょう ☆
〔第５２回〕 ２０１３.０３．０３
きょうは雛祭りですね。御無沙汰しています。５か月ぶりの更新です ☆
冬眠はしていませんでしたが、こたつむりになっていました ☆
ホームページ・「虫明焼について・蓼純の虫明焼半可通」（このＨＰ）、は、
池上千代鶴と、桂又三郎の虫明焼研究に基づいて、私・蓼純の考えを お話してきました。
虫明焼を、この両人ほど研究された方は、今までにいません。また、今後も出てこないでしょう。
池上千代鶴は、 [虫明焼の記録] を、
桂又三郎は、［備前虫明焼］・［増補・改定備前虫明焼］を、著しています。
虫明焼の記事が、［焼もの趣味］、［陶説］、［阪急美術］などの雑誌に載ることは有りましたが、
虫明焼を本としてまとめたものは、残念ながらこの三冊だけです。
［備前虫明焼］・桂又三郎著・木耳社は、１９６６年１月２５日付で初版が発行されました。
採算が合わない本は、増刷されませんので、第２刷はありません ☆
発行部数が少ないうえに、発行から５０年近く経っているため、非常に入手しにくい本です。
このＨＰで、二人の研究成果のエッセンスだけは、伝えられたのではないかと思っていますが、
この希少な書籍・［備前虫明焼］を、もう一度読みながら、お話していきたいと思います。
精読すればいいのですが、活字が小さいので、流し読みです ☆
精読したい方は、岡山県内では、つぎの公立図書館には あります。
岡山県立、岡山市立中央、倉敷市立、高梁市、それと和気町立の各図書館等です。
それでは、 ［備前虫明焼］を再び読む・第一話 です。
［備前虫明焼］３ページ。 「虫明というところ」
虫明の場所などの説明をしたあとに、虫明八景について記されています。
『・・・・・』内が、［備前虫明焼］からの抜粋です。
『伊木家四代清兵衛忠親が元禄十二年、新井白石に依頼し、近江八景に倣って、虫明八景の詩を作っ
てもらった。それは、迫門の黎明、裳掛の残月、玉葛の晴雪、立華の鹿鳴、舟越の帰帆、扇ガ浜の夕陽、
黒井の晩鐘、琴ガ浜の夜雨の八景である。』
今だったら、虫明湾の牡蠣筏（かきいかだ）は、外したくないところですね ☆
虫明八景について、このHPでは、お話
したことはありません。
虫明八景。何か、こじつけみたいですが、虫明焼には、この八景を絵付けしたものがあります。
煎茶器、花入れなどに虫明八景の絵を描いています。
道の駅・黒井山グリーンパークでは、「虫明八景ポストカード」を販売しています ☆
［備前虫明焼］９ページ。 「虫明と伊木」
このＨＰでも、虫明焼と伊木三猿斎との関係については、何度かお話し致しました。
でも、復習の意味で引用させていただきます ☆
『伊木家は、もともと相模（神奈川県）の国の出身であるが、中途、尾張で織田信長に仕え、のち池田信
輝に仕えてから、尓来池田家との主従関係ができ、それが幕末まで続いたわけである。慶長六年、池田
輝政が関ガ原の功により播州姫路城主となったとき、伊木清兵衛は、播州三木の城を預かって城主とな
った。そしてこの清兵衛を伊木家では初代としている。三代目忠貞のとき、つまり元和三年、池田光政が
鳥取城主になったとき、これに従って鳥取に移り、さらに寛永九年六月十八日、光政が鳥取から備前へ
国替えになったので、またこれに従って備前に移り、同十六年邑久郡を采地として三万三千石を賜り、備
前国老の主席となった。そして邑久郡裳掛村大字虫明に、家老職一人と御物頭その他の藩士を約三十
名常置させた。これが虫明と伊木家との繋がりをつくった初めで、こうしたことを背景として、この地に焼き
ものが生まれたのである。』
［備前虫明焼］１０ページからは、 「窯の分類」 について記しています。
『虫明焼が、いつごろから始ったかということは明らかでないが、・・・・・』
と、書き書き始めています。
このＨＰでも、虫明焼は、文政元年（１８１８年）頃に、虫明池奥に窯を築いたという説が有力です。
と、断定しない話し方をしてきました ☆
桂又三郎は、虫明焼の窯歴を窯の場所や、陶工（陶芸家・作家）によって五期に分類しています。
『第一期；瀬戸窯（御庭窯）時代 元文の頃。虫明瀬戸』
『第二期；池奥窯（御庭窯→民窯）時代 文政初年から天保１３年。備前焼似せもの事件。虫明池奥』
『第三期；間口窯（御庭窯→民窯）時代 弘化４年に清風与平、後に宮川香山が来窯。虫明立場』
『第四期；森香洲時代 森香洲が活躍。』
『第五期；昭和時代 大正から昭和。横山香寶、岡本英山、黒井一楽の窯。』
［備前虫明焼］１１ページ。 「第一期・瀬戸窯」
『資料はなに一つなく、はっきりした時代考証を試みることはできにくい。窯址は虫明字瀬戸にあり、いま
はゴミ捨場と化しているが、盛り土の中からサヤの破れ、小さくこわれた陶片などを採集した。』
このことから、時代は判明しませんが、少なくとも小さい窯が有ったということは、想像できます。
［備前虫明焼］１９ページ。 「第二期・池奥窯」
昭和１５年（１９４０年）に、桂又三郎が現地調査をしています。
『虫明池奥に、大小２つの窯址がある。そして小窯が古く、大窯が新しい。いずれの窯も、山の斜面を利
用した登り窯で、小窯は、御庭窯として築かれ茶陶を、大窯は民窯として日用雑器を焼いていたことが陶
片から分かる。（備前焼風の陶片を採集。）天保１３年に起きた備前焼似せもの事件のときの窯はこれで
あろう。さて、池奥窯で問題になるものが二つある。一つは仁阿弥道八の問題であり、一つは備前焼似せ
もの事件である。』
大窯は民窯として日用雑器を焼いていた。と、書かれていますが、
完全な民窯ではなく、大窯も半官半民あるいは、それ以上の援助があったのだと思います。
［備前虫明焼］２２ページ、右上の写真が「池奥窯 足付平鉢年銘拓本」です。
「天保十二年・・・・・」と、刻んでいます。
［邑久町史・文化財編］１８９ページに掲載の、太田コレクション「番外 水盤」の拓本です。
このＨＰでは、以前に「太田コレクションに学ぶ」で、お話いたしました。
２２ページの下の写真が、虫明池奥窯で焼かれた備前焼風の人形徳利です。
備前焼と少し雰囲気が違う感じもしますが、似ている、と言われても仕方がないかもしれません。
人形徳利。岡山県以外の方は、ご存知でないかもしれませんね ☆
広島・鞆の浦の保命酒徳利としても、使われましたので、広島県の方はご存知でしょうか。
骨董屋さん（古美術店）には置いていますが、美術館には展示されませんからね ☆
ロクロ挽きした徳利を手（掌）で押さえて凹んだ所に、型で作った人形の片を張り付けています。
そうです、帖花（ちょうか）という工法です。
［備前虫明焼］２３頁からは、「仁阿弥道八」。道八の虫明来窯について記しています。
うーん、仁阿弥道八か ☆
それでは、今回はこれで終わって、次回は「仁阿弥道八」から読んでいきたいと思います ☆
「蓼純Ｃｏｌｌｅｃｔｉｏｎ」のページには、釉を掛けた（施釉）虫明焼の人形徳利をＵＰします。
時代は下りますが、施釉の人形徳利は、めずらしいのでご覧になってください ☆
〔追記〕
「蓼純Ｃｏｌｌｅｃｔｉｏｎ」のページには、釉を掛けた（施釉）虫明焼の人形徳利をＵＰします。
と、お話いたしましたが、写真は既に削除していますので、再び下に載せました。
虫明焼・森香洲作の人形徳利です。
轆轤引きしたのちに、三角に手（掌）で押さえ、神仙・寿老人を貼り付けています。
〔第５３回〕 ２０１３.０４．１５
今日は、 ［備前虫明焼］を再び読む・第二話 です。
［備前虫明焼］２３ページ。 「仁阿弥道八」
ホームページ・「虫明焼について・蓼純の虫明焼半可通」（このＨＰ）では、
仁阿弥道八（にんなみどうはち）について、お話した事は有りません。
しかし、桂又三郎は、仁阿弥道八の虫明来窯説を採っています。
『・・・・・』内が、［備前虫明焼］・桂又三郎著からの抜粋です。
『虫明焼と道八との関係は、はたして有ったものか、単なる伝説か、明らかではないが、道八も虫明へ行
っているのではないかと思う。道八の作品と思われる虫明焼も数点伝世されているし、伊木家の蔵帳に
は、道八の作品が相当数記載されている。』
と書いて、蔵帳のなかから道八作と書かれている項目を抜き出しています。
ただし、道八作品ではあるが、虫明焼・道八作品ではないと思います。
続いて２６頁からは、仁阿弥道八の来虫について書かれた文献を調査されています。
よく調べられています。下に抜粋させていただきます。
『・・・・・』内に「・・・・・」が入るのは、通常表記と逆ですが、見やすいように、そうしています。
『道八が虫明に行っているということを最初に発表したのは藤谷栄尾で、明治の末頃に［諸国窯の歴史］
という原稿をまとめた。そのなかに、「道八が虫明に行っている。」ということを書いている。』 『大正１０年
に発行された［彩壺会講演録・仁阿弥道八］は、大河内正敏の講演を筆録したもので、その中で、「仁阿
弥は讃岐の高松にも行き、備前の虫明にも行った。虫明に行って京窯風の陶器を焼いたのは真葛長造
であると言って居るが、其以前に仁阿弥道八が行って居る。」といって、道八は各地に指導に行っても、
自己の作品に銘款を入れない癖があると指摘している。』 『大正１４年に出た今泉雄作、小森忍共著
［日本陶瓷史］には、「文政年中に備州岡山の藩士伊木某と云ふ者が、虫明窯を開くや、仁阿弥は特に
聘せられて、同地へ赴いて各種の茶器を作り、兼ねて又同地の工人に其陶法を伝授した」と書いてある。』
『昭和１２年に出た［陶器講座］に載っている松平義明の<仁阿弥道八>によると、「文政三年備前岡山の
家老伊木某が、同国の邑久郡虫明村に窯を築いた時、道八は特に召聘せられて、虫明に行き、各種の
茶器を作り、又同地の工人に其陶製法を伝授した。」とある。』 『また同じく［陶器講座］に吉田堯文が書
いている<粟田焼清水焼>に、「仁阿弥の名声は益揚って、紀州候に招かれ、讃岐候にも招聘され、薩摩、
虫明にも行き、其才腕を縦横に振った。」とある。』 『昭和１３年、雄山閣から出版した満岡忠成［陶器図
録］に「東京帝室博物館蔵の虫明焼雪笹手鉢の如きは仁阿弥ならではと思はれる傑作であつて、遺品に
就てみる時、彼の虫明来窯説を信じたい。虫明窯に於ける仁阿弥作品に銘印の存しないのは彼が他窯
に招かれた際には、自家の銘印を用いないからである。」といっている。』 『高草藍山は昭和１１年、［焼
もの趣味］にやや半信半疑の躰で、「清風作陶図案帖の紙片に、初代清風が仁阿弥に随行して虫明へ
往つたといふ事を附記してあった。どうも仁阿弥が虫明に来たといふ臭がしてならぬ。」といっている。』
『昭和１４年［画説］に、北原大輔と脇本楽之軒の二人が<仁阿弥道八を語る>という座談会の記事を載
せているが、それによると、
「（北原）備前の虫明は言はゞ讃岐への路の途中とも考へられます。作品から見ても虫明にはさういふ
気味合のものがあつて、あなたの竹の絵の讃窯の鉢など虫明そつくりですな。
（脇本）さうさう、何時かの入札にあの竹そつくりの水指がありましたね。虫明の。（北原）讃岐の竹も虫明
の竹も、節の処でクツクツと幹が曲がります。（脇本）若し銘印がなかつたら讃窯と混同しませんか知ら。
（北原）帝室博物館に虫明焼の雪笹の鉢がありますな。あれなども讃窯と同系統のもので、作行きからい
へば仁阿弥風の丸みといふよりも、少し鋭いところがあります。」
この座談会の記事によると、虫明焼と讃窯とが非常によく似ていることや、また仁阿弥が、讃窯へ行く途中
虫明に行ったように語っている。』
『帝室博物館出版の［日本美術略史］昭和１５年にも、「四国の讃窯は仁阿弥父子の開窯に負ふところ
が多い。備前虫明焼と道八及び真葛等京焼を範とする窯は頗る多数に上って居り京焼は江戸時代陶
芸の中心をなす観があった」とある。』
『国立博物館の田中作太郎も［日本の陶磁］昭和２９年に、「仁阿弥は、各地方窯に招かれて、陶器焼成に
関与した。備前の虫明焼、讃岐の高松焼、紀伊の偕楽園焼などがそれで、・・・』
『道八がいつごろ虫明に行ったかと言うことになると、松平義明が［陶器講座］に書いた文政３年説、大河内
正敏の文政９年以降説、今泉雄作の文政年中説、北原大輔の天保３年、高草藍山の弘化４年説ということに
なる。どの説が正しいか明らかでないが、仁阿弥の伝記などとも考え併せて、文政から天保初年の間で
あろうと思う。ともかく結論的にいって、仁阿弥の作品で虫明銘のものが伝世されている以上、来窯説を
信じていいのではないだろうか。そして仁阿弥が焼いたと思える窯は、池奥古窯であろうと思う。』
と、桂又三郎は結んでいます。
このＨＰでは、仁阿弥道八については、スルーいたしました ☆
それは、私・蓼純が、「仁阿弥道八が虫明に来た」 という説を採っていないからです。
桂又三郎は、多くの文献を調査されて、『仁阿弥の来窯説を信じていいのではないだろうか。』
と、考察されています。
なんだか長くて、ややこしくなりましたが、とりあえず終わって、次回も「仁阿弥道八」です ☆
「蓼純Ｃｏｌｌｅｃｔｉｏｎ」のページには、雪松の鉢をＵＰしました。
ええ、仁阿弥道八作ではありません ☆
「むしあけ」印のみですが、森香洲作です。
虫明焼に、森香洲ありです。
東京国立博物館の雪笹手鉢より、ずっといいです。
少し、言いすぎました。（反省☆）
〔追記〕
上記の文献のうち、［陶器講座］松平義明の
「文政三年備前岡山の家老伊木某が、同国の邑久郡虫明村に窯を築いた時、道八は特に召聘せられ
て、虫明に行き、各種の茶器を作り、又同地の工人に其陶製法を伝授した。」 について
池上千代鶴が、著者の松平義明に尋ねたが、
「先識の資料を引用し自分の調査した資料は持ち合わせなき。」 との回答を得た。
と、［虫明焼の記録］１７３ページに書いています。他の文献も、同様の事があると推測されます。
〔第５４回〕 ２０１３.０５．１１
今回は、「仁阿弥道八」の続きを、お話する予定でしたが、変更いたします ☆
イベント情報２件です。
〔第４７回〕で、虫明焼・真葛香山（まくずこうざん・宮川香山）作の染付樽が英国で発見された。
と、お話いたしました。
そうです、岡山県重要文化財（県重文）の手付き染付樽と、非常によく似た感じの染付樽です。
「おかえりなさい、染付樽」
虫明で作られた染付樽が、英国から帰ってきました。
虫明焼が、英国に渡ったことがサプライズなら、英国から帰ったことは、もっとサプライズです。
新発見の英国染付樽と、県重文の染付手付樽を、岡山県立美術館に並べて展示しています。
「岡山の美術展・虫明焼」です。
私・蓼純も、観覧いたしました。
県重文の染付手付樽は、以前にも見たことが有ります。
なにか、悲しく、寂しそうでした。
しかし、英国染付樽と並べて展示すると、県重文の染付手付樽も、明るく輝いています。
単なる、照明の関係でしょうか ☆
日時 ２０１３年５月８日（水曜）～５月２６日（日曜）
０９：００～１７：００ 休館は、月曜日。
場所 岡山県立美術館
岡山市北区天神町８－４８
二つの染付樽を並べての展示ですので、県重文の手付染付樽と、英国染付樽の、
姿・形、磁質、染付(ゴス)の色、絵付などを、よく比較してみて下さい ☆
ただ、あまり難しく考えないで、明治３年に虫明で、真葛香山が造った手付き染付樽の美を、
素直に感じていただけたらと思います。
あのブルース・リー(李小龍)も、「考えるな！感じるんだ！」 と、言っています ☆
確かに、虫明焼真葛香山作品は、ニセモノが多いです ☆
「熱ものに懲りて、ナマスを吹く」 と言いますが、英国染付樽は、吹かなくても大丈夫です ☆
英国染付樽も、手付きだったのでしょうが、今現在は、残念ながら、手が無くなっています。
手を付けていた形跡は有りますが、手付染付樽とは、少し言いにくいです ☆
英国染付樽の制作から、１４０余年の歳月が経っていますから、
手が取れることぐらいは、仕方がありません。
海を渡って、遠く英国から、よく無事で生還してくれた。
と 思うと、パソコンの画面が、涙で曇ります。 （ウソです☆）
明治３年に真葛香山が虫明で造った染付樽を、横浜の眞葛博士が、
英国から里帰りさせてくださったわけです。
しかも、横浜ではなく、岡山で展示していただいています。
横浜の眞葛博士と、岡山県立美術館に感謝しながら、ゆっくりと、楽しんでください ☆
以前にも、お話いたしましたが、この英国染付樽から、二つの事実が判明しました。
英国染付樽の鏡（蓋）部分に、「漢詩、制作年月・庚午桐月、香山」の染め付けがあります。
「庚午（かのえうま）」ですから、明治３年（１８７０年）です。桐月は、７月のことです。
ゆえに、真葛香山は、明治３年（１８７０年）７月迄は、虫明に滞在していた、 と考えられます。
もう一つは、真葛香山は、虫明滞在中から、「香山」銘を使っていた。
この二つの事実が、英国染付樽の発見によって判明したわけです。
英国染付樽発見以前は、県重文の染付手付樽の鏡（蓋）部分に書かれた、
「午初春」の染付けから、虫明滞在は、明治３年（１８７０年）の初春と考えられていました。
ほかの展示品は、岡本英山（おかもとえいざん）の十二か月抹茶碗があります。
岡本英山のものが多いですね。煎茶器、水指、それと水注などです。
虫明八景を描いた、煎茶器もありました。
もう一件、展示会です。
６月の初めから、虫明焼の企画展が始まります ☆
日時 ２０１３年６月５日（水曜）～８月４日（日曜）
０９：００～１７：００ 休館は、月曜日。月曜日が休日となる場合は火曜日。
場所 野崎家塩業歴史館
倉敷市児島味野１－１１－１９
真葛香山、清風与平、森香洲などの虫明焼作品が、展示されるそうです。
塩田王野崎家・野崎家塩業歴史館の、館蔵品です。
塩田王ですから良いものを持たれているということは、私にも容易に想像できます。
ただ、野崎家の迫力に負けないで、品物（作品）を見てくださいね ☆
どんな立派な美術館・博物館に展示されても、どんな豪華な書籍に載っていても、
逆に、貧乏な私がもっていても、「悪いものは悪い、良いものは良い」 です。
深い意味は、ないですよ ☆
野崎家塩業歴史館の展示は、まだ始まっていないので、私も見ていません。
以下は、「イベント情報」から、抜粋させていただいています。
岡山県 瀟洒な虫明焼の美
日本の塩田王「野崎家」に伝わる虫明焼のうち幕末・明治から大正・昭和期の作品を中心に展示。
岡山県瀬戸内市のやきもの「虫明焼」は、江戸時代に岡山藩筆頭家老伊木家の御庭焼として生まれた。
江戸時代から現在に続く作風は、京都から招いた初代清風与平や初代真葛香山が礎を築き、地元出身
の森香洲が発展させた。その技法は、灰緑色の土灰釉を基本に鉄釉などで絵付をして薄く優美な
つくりである。 （以上イベント情報から）
虫明焼の展示会を、二件紹介いたしました。ぜひご覧になってください ☆
次回は、［備前虫明焼］を再び読む、に戻ります。
〔第５５回〕 ２０１３.０６．０５
前回紹介した・岡山県立美術館での 「岡山の美術展・虫明焼」 は、ご覧になられましたか（？）
岡山県重要文化財の手付き染付樽も、英国染付樽と会えて、安堵したのか、
輝きと、重厚さを増したようでしたね ☆
この染付樽は、一対（いっつい）ではありませんが、二つ並べることによって、
１プラス１が、２ではなくて、３から５の魅力を出してきます ☆
これは、私・蓼純の偏見ではないと思っていますが・・・
真葛香山は、高浮き彫りなどの花入れ（花瓶）を造るとき、必ず（？）一対にしています。
真葛香山の花瓶一対を見られた方も、１プラス１が、３から５だと感じられたことと思います ☆
なお、野崎家塩業歴史館の、 「塩田王野崎家のやきもの 虫明焼」 企画展が今日から始まります ☆
私も、今日の午後から、出かけようと思っています。
詳しくは、前・〔第５４回〕、または、「今月の抹茶碗」の頁を見てください。
あっ、詳しくは、野崎家塩業歴史館の、ＨＰを見られた方がいいですね ☆
それでは、今回は、 ［備前虫明焼］を再び読む・第三話 です。
［備前虫明焼］２３ページ。 「仁阿弥道八」 前々回の続きです。
桂又三郎は、仁阿弥道八の虫明来窯説を採っている。
しかし、このＨＰでは、仁阿弥道八が虫明に来た、 という説を採っていない。
と、いうところまで、お話し致しました。
桂又三郎は、前回紹介しましたように、文献をよく研究されています。
「仁阿弥道八が、虫明に行った」 と、いう資料です。
しかし、「○○が、△△へ行った」 とは書きますが、「○○が、△△へ行っていない」
とは、本には書きませんからね ☆
ですから、虫明焼のことを書いているのに、仁阿弥道八のことを書いていない、
逆に、仁阿弥道八のことを書いているのに、虫明焼のことを書いていない、
他のすべての本は、仁阿弥道八の虫明来窯説を否定していると、言えなくもありません ☆
また多くの本は、讃窯（香川県）に行く途中、あるいは帰途に虫明に寄った。 と、書いています。
しかし、目的地の窯に行く途中に、他の窯に寄って制作する、ということがあるのでしょうか。
たしかに、岡山県の虫明窯と、香川県の讃窯は、とても近いです ☆
でも、焼きものを作るわけですから、２～３日とどまったのでは、完成するわけが有りません。
土（粘土）を探す、練る（調合）。成形。自然乾燥。素焼、冷却。絵付け、釉掛け。本焼、冷却。
作品を完成させるには、少なくとも、ひと月弱は滞在する必要がありそうです。
ついでに寄るというのは、少し不自然ではないでしょうか ☆
さらに文献は、〔第５３回〕の〔追記〕で紹介いたしましたように、
「先識の資料を引用した」 と、いうことも多々あるわけです。
「仁阿弥道八が虫明に来た」 と、決定するには、文献からは少し弱い感じがいたします ☆
北原大輔と脇本楽之軒の座談会の記事が、載っていましたね。
対談は執筆よりは、本音（思い）が出やすいので、再度抜粋させていただきます。
『（北原）帝室博物館に虫明焼の雪笹の鉢がありますな。あれなども讃窯と同系統のもので、作行きから
いへば仁阿弥風の丸みといふよりも、少し鋭いところがあります。』
桂又三郎が、「仁阿弥道八が虫明に来た。」と、肯定するために引用した文献を、
私が、否定するために使うのは、厚顔無恥だと言われても仕方ありませんが、
『（北原）虫明焼の雪笹の鉢・・・・・、仁阿弥風の丸みといふよりも、少し鋭いところがあります。』
北原大輔は、「虫明焼の雪笹の鉢は、仁阿弥道八作では無い」 と、感じたのだと思います。
帝室博物館・今の東京国立博物館（東博）の、雪笹手鉢は、［備前虫明焼］に写真が有ります。
「雪笹手鉢 仁阿弥道八作」として、目次の次・口絵にカラー写真が載っています。
東博のホームページからも、ご覧になれます。
雪が深いですね。よく降っています ☆
鉄釉で描いた「虫明」銘は、２９ページですが、道八の書体と似ているのでしょうか。
桂又三郎は、口絵・カラー写真の下に 「雪笹手鉢 仁阿弥道八作」 と書いていますが、
東博に展示される場合は、 仁阿弥道八作としては展示されません。
「雪笹手鉢 虫明銘」 の札だけです ☆
足の作りなどを見ると、仁阿弥道八というよりも、初代清風与平に近い感じもしますが・・・
結論の出ないことを、長々とお話して申し訳ございません ☆
私・蓼純は、 仁阿弥道八は虫明に来ていないのではないか。 と思っています。
しかし、桂又三郎の、仁阿弥道八の虫明来窯説に対抗する資料は何もありません ☆
したがいまして、「仁阿弥道八は、絶対に虫明に来ていない」 と、断定できません。
岡山弁で言うと、「来てねぇんじゃあ ねぇん」 と、いうニュアンスです ☆
何か資料が出た場合、あるいは作品を見たりした時には、潔く（無責任に）訂正いたします ☆
「蓼純Ｃｏｌｌｅｃｔｉｏｎ」のページには、引き続き、雪笹の鉢を載せています。
次回は、［備前虫明焼］３５ページ。「備前焼似せもの事件」から読んでいきます。
〔追記〕
仁阿弥道八の来虫説については、 池上千代鶴も[虫明焼の記録]に詳しく書いています。
結論部分だけを抜粋しますと、[虫明焼の記録]３２７ページに、
「仁阿弥道八につき伊木家主公の愛陶性を始めいろいろ調べてきたが何等来窯説にプラスになる資料
は出てこなかった。結論的に云って仁阿弥道八は虫明に来窯せなかったと断定しても過言ではない。」
と、書いています。
〔第５６回〕 ２０１３.０７．１５
野崎家塩業歴史館の、 「塩田王野崎家のやきもの 虫明焼」 は、８月４日（日曜）迄です。
暑い季節ですし、虫明の方には少し遠いのですが、ぜひご覧になって下さい ☆
入口で、狸が迎えてくれますよ ☆ （狸炉蓋・田中波石作）
ヘタな鑑賞報告をする気はありませんが、一点だけ、解説をさせていただきます ☆
森香洲(もりこうしゅう)作、白泥富士図抹茶碗です。
<写真は、野崎家塩業歴史館の虫明焼展から>
天目形で、富士山を描いた、小振りの良い茶碗です。
展示札を読まれた方もいると思いますが、この抹茶碗には、
「むしあけ」印、「香洲」印、それと「三」の彫り銘があるようです。
この抹茶碗の「三」の彫り銘は、[虫明焼の記録]２４ページに、
「森香洲が使用した銘款」として三つ載っている内の、左側の「三」だそうです。
「三」の銘は、伊木三猿斎自身が彫ったのか、森香洲が彫ったのかは、判断できませんが、
伊木三猿斎の注文(応需)によって、森香洲が造ったであろうことは、推測できます。
そういう意味でも、貴重(希少)な抹茶碗だと言えます ☆
それでは、 ［備前虫明焼］を再び読む・第四話 です。
［備前虫明焼］３５ページ。 「備前焼似せもの事件」 です。
『・・・・・』内が、［備前虫明焼］・桂又三郎著からの抜粋です。
『虫明焼の窯史のうちで最も大きな事件は、天保年間、三猿斎の領地虫明村で、備前焼類似の焼物を
焼いているということで、伊部の窯元から藩に訴えられ、そのため、虫明窯の責任者が処分されたり、また
その窯が廃窯になったという事件である。虫明焼にとっては最悪の事態にたち至った。』
このＨＰでも、備前焼似せもの事件（ニセ備前焼事件）については、お話いたしました。
どうでも良いことですが、「備前焼似せもの事件」だと、備前窯で何か似せものを造ったみたいですね ☆
虫明窯でニセの備前焼を造ったのなら、「ニセ備前焼事件」と言った方が良いと思います ☆
文政元年（１８１８年）頃、虫明池奥に今吉吉蔵（いまよしよしぞう）の築いた窯が、
ニセ備前焼事件などを、きっかけとして、天保１３年（１８４２年）に廃窯となります。
藩の保護を受けて、備前焼（伊部焼・炻器）を造っていた時代です。
でも、炻器です。土（粘土）を焼き締めて器にすることは、古代から自然に行ってきたわけです。
備前焼のアイデアとか、発明と言うわけでは有りません ☆
備前焼と似たようなものは、丹波、常滑、越前など、全国で焼かれています。
ただ、同じ領内で、備前の窯と近い虫明で造ったために、訴えられたようです。
『虫明焼は、伊部の窯元から訴えられ、廃窯になった。虫明焼は最悪の事態にたち至った。』
と、桂又三郎は、書いています。
しかし、「万事塞翁が馬」という故事があるように、ピンチはチャンスなりです ☆
虫明焼は、廃窯からわずか五年弱で、京都から初代清風与平を招き、京都の焼物を習います。
『虫明焼は最悪の事態にたち至った。』
確かにそうだったのでしょうが、私・蓼純は、虫明焼が、備前焼と似た・亜備前焼に成らずに、
虫明焼として育ったのは、よかったと思っています ☆
このニセ備前焼事件などをきっかけにして、天保１３年（１８４２年）に虫明焼は廃窯となった。
と、言うことです。詳しく知りたい方は、［備前虫明焼］を見てください ☆
「備前焼似せもの事件」について、３５ページから５０ページまで、詳しく書いています。
つぎは、［備前虫明焼］５１ページ。 「第三期・間口窯」 を読んでいきます。
『三猿斎としては、窯を絶やすことは心外であり、自分自身興味を持っていたので、弘化４年春、京都の
初代清風与平を招いて、窯を虫明の間口という海岸の近くに築いた。』
虫明の間口(まくち)という海岸の近くは、虫明立場(たてば)と言う地名になります。
［備前虫明焼］５３ページから、「古窯物原発掘の陶片」の写真が載っています。
皿、鉢、徳利・・・。赤絵、染付、筒描き、掛分け・・・。絵付けも色々ですね ☆
続いて、［備前虫明焼］５７ページの 「清風与平」 に進みます。
『金沢（石川県）の保田与平の男として享和三年に生まれ、文政年間に上洛して仁阿弥道八の弟子とな
る。作品は和漢陶磁器・楽焼・置物などを製作した。特に古染付・青磁などの酒器や茶器・食器、それに
土製のものを得意としていた。』
『間口窯（立場窯とも）は伊木三猿斎が弘化四年、初代清風与平を招いて築窯させたものである。
約半カ年ほど滞在して土地のものに陶技を指導したという。』
『初代清風与平は、あらゆる古陶を写している。そしてそのうち上がりのいいものとか、好みのものは三猿
斎が取り上げているし、また自ら愛玩したものは蔵帳に記載している。』
『銘款は初代清風与平は丸のうちに「琴浦」と隷書で書いた陽印と、楷書で書いた「清風」印とを併用し
ている。もっとも「琴浦」印だけの場合もある。また染付の作品には「於備陽清風造」とか「於明浦清風造」
と染付している。』
と、いうことです。先にお話した仁阿弥道八と違って、
初代清風与平は、弘化４年（１８４７年）虫明に来たことが、ハッキリとしています ☆
このＨＰでも、以前に初代清風与平のことは、何度かお話いたしました。
だけども 問題は 今日の雨。 ではなくて、二代清風与平です。
私・蓼純は、二代清風与平は虫明に来ていない、と思っていますが、
桂又三郎は、「二代清風与平も虫明に来て作品を焼いている。」 と書いています。
『二代清風与平は、文久三年に虫明へ出かけて作品を焼いている。それは裏千家々元精中宗室こと
玄々斎が、文久三年九月に催した少庵宗淳の二百五十回遠忌に、三猿斎が少庵所持伝来の高麗三島
角水指を虫明窯で三十個焼かせて寄進した。この水指の写しはその作行きから考えて、恐らく二代清風
の作であろう。』
「恐らく二代清風の作であろう。」 と言うのは、桂又三郎にしては、アバウトな表現ですね ☆
桂又三郎は、二代清風与平が、虫明に来ているという資料のないまま、
「高麗三島写し角水指は、二代清風与平が作ったであろう。」 と、言っています ☆
しかし、池上千代鶴（いけがみちよづる）は、二代清風与平の来虫を否定しています。
「清風与平の再来窯したとか、二代清風の来窯をまことしやかに触れ騒ぐ愛陶家があるらしいが、京都清
風家の記録を充分調べないものの机上の推論に近いものの声とうけとる。清風再来窯、二代清風の来窯
は採らず。」
と、[虫明焼の記録] ３３０ページに書いています。
私・蓼純も、池上千代鶴の「清風再来窯、二代清風の来窯は採らず。」に、同意します ☆
と言うことで、今回は終わります。
「蓼純Ｃｏｌｌｅｃｔｉｏｎ」のページには、初代清風与平の蓋物(菓子器)をＵＰしました。
初代清風与平作の、虫明焼菓子器ですので、ご覧になってください ☆
初代清風与平が、虫明で使った・丸に「琴浦」と隷書で書いた陽印、を捺しています。
半磁器(半陶半磁)に、紫陽花(あじさい)を染めつけた、良い菓子器です。
私・蓼純は、純白な完全な磁器より、半磁器(半陶半磁)の方が好きです ☆
「於虫明清風造」とか、「於明浦清風造」と、純白な完全な磁器に染付けられた、
上手（じょうて）すぎる清風与平作品を、よく目にしますが、どうなんでしょうか。
弘化４年（１８４７年）に、虫明で造った磁器としては、不自然な感じもいたします。
それでは、不自然でない初代清風与平作品の載っている、本を紹介しておきます ☆
平凡社発行の ［日本やきもの集成９山陽］ ３３ページ、１１０ページに硯屏が載っています。
硯屏というのは、実用向きな品ではないので、三猿斎向きということでしょうね ☆
［備前虫明焼］ の口絵にも、清風の水指が載っています。雪笹手鉢の次です。
三島狂言袴水指、 「琴浦」 陽印と 「清風」 印を捺しています。
良い水指ですね。どなたの所蔵品なんでしょうか（？）
暑さ厳しき折りですが、体に気をつけてお過ごしください ☆
次回は、［備前虫明焼］６５ページの、 「初代楽長造」 から読んでいきます。
〔第５７回〕 ２０１３.０８．２４
昨晩からの雨で、少し涼しくなった感じですが、元気でお過ごしでしょうか ☆
今年の夏は、特別に暑かったですね。
さて、今回は ［備前虫明焼］を再び読む・第五話 です。
［備前虫明焼］６５ページ。 「初代楽長造」 に進みます。
いつものように、『・・・・・』内が、［備前虫明焼］・桂又三郎著からの抜粋です ☆
『楽長造は姓を宮川といい、屋号を茶碗屋といった。また別に土師屋長造の俗称もあったという。通称は
長造で隠居名を長兵衛と称した。また楽は家業に楽焼を焼いていたので、俗に楽屋とも呼んでいたから
であろう。この初代楽長造は、寛政九年に生まれ、万延元年三月に歿している。』
『真葛号は、長造が真葛ガ原に移ってから、その地名に因んで安井門蹟からもらった。また晩年に知恩院
華頂宮から、香山という号を拝領している。』
楽長造（らくちょうぞう）は、姓が宮川であるため、宮川長造（みやがわちょうぞう）とも呼ばれ、
観勝寺安井門蹟に「真葛」の号を賜ってからは、真葛長造（まくずちょうぞう）の号を使いました。
ですから、楽長造（らくちょうぞう）＝宮川長造＝真葛長造と言うわけです ☆
ただ、虫明焼の話をするときは、長造、あるいは真葛長造といいますね。
楽長造とか、宮川長造とは、あまり言いません ☆
横浜で輸出用の磁器を焼いた・初代真葛香山（まくずこうざん・寅之助）は、真葛長造の四男です。
真葛長造が、知恩院華頂宮から、香山という号を拝領したのですから、
真葛長造が、初代真葛香山なわけなのですが、通常は初代真葛香山とは言いません。
初代真葛香山とは、真葛長造の四男・寅之助のことです。
真葛長造については、昭和６３年（１９８８年）に毎日新聞社から、［真葛］という本が出版されています。
［幕末の陶工・真葛長造作品集成と歴代系譜 真葛］・宮川香齋著 です。
この本が出るまでは、真葛長造を含め、真葛について、ほとんど判っていませんでした。
この本が出てからも、判らないことが多いのですが・・・ ☆
著者の宮川香齋も、
「長造没後約百三十年を経た今、その事々に今一つわからない点が多いため、より具体的に真葛長造
の作品と、作品の印、箱書等を紹介し、その事実と美の世界を解明致したく今回編纂致しました。」
「長造独自の作風は、取り合わせの上でも他の茶道具と調和がとりやすく、如何にも茶味に叶ったものと
みることができよう。」
と、書いています。
真葛長造の作風。すなわち、「他の茶道具と調和がとりやすく、茶味に叶ったもの。」
この作風が、現在の虫明焼にも、引き継がれています。
瀬戸内市の中央公民館・太田コレクションには、真葛長造作の秋草絵水指が展示されています。
続いて、［備前虫明焼］７１ページ。 「二代楽長造」 に進みます。
『二代楽長造は名を長平といい、初代楽長造の長男であるが、初代の跡を追うように、万延元年六月に
病歿した。』
『楽長造と虫明焼の関係であるが、初代楽長造は虫明に行っていないと思う。そのことは、一つとして作
品に「むしあけ」印のあるものがなく、またその箱書きも「於明浦」とか「於虫明」とかの文字のあるものを
見ないからである。虫明へ行ったのは二代楽長造である。その有力な資料の一つに、池田家蔵耳付四
方水指がある。この箱書きは三猿斎で「洛真葛楽長造 虫明寓居作也」と書いている。そのほか、作品
に平仮名の「むしあけ」印と隷書の「真葛」印とを併用し、そしてその箱書きに「於明浦 楽長造製」と書
いたものが、岡山地方にときどき見られる。箱書きの特徴は、初代は多く「楽長造々」としているが、二代
は「楽長造製」としている。』
『ところで二代楽長造がいつごろ虫明へ行ったかということについては、はっきり断言できないが、清風
が嘉永五年に来窯しているから、その後であろうと思われる。恐らく安政年間というところではないかと
思う。』
と、書いています。［備前虫明焼］６５ページの「初代楽長造」には、何も書いてなかったのですが、
７１ページの「二代楽長造」の項では、初代楽長造の虫明来窯を否定しています。
私・蓼純は、初代楽長造が虫明に来たという説を採っています。
例えば、瀬戸内市中央公民館・太田巌コレクションの水指です。
例えば、桂又三郎が言っている、池田家蔵耳付四方水指です。
この池田家蔵耳付四方水指が、長平（二代真葛長造）の作であるのならば、
伊木三猿斎は、「洛真葛楽長造」とは、箱に書かなかったと思います ☆
昭和５３年（１９７８年）に、「珠玉の香合展」が、東京、京都など五都府県で開催されました。
里帰りしたクレマンソー・コレクション 「珠玉の香合展」です。
その時の図録・［珠玉の香合］に、虫明焼の香合が三点載っています。
この香合は、真葛長造作だと思います。
それでは、桂又三郎と虫明焼研究の双璧をなす・池上千代鶴の考察をみます。
［虫明焼の記録］３３６ページ。
「青少年期の長平が有名人父長造の名を僭越にも借り、陶工然と図々しく出稼的に虫明に来たなどとは
到底信ぜられない。」
また、３４２ページには、
「当代の京都真葛家、香斎は同家の伝承に従い、長造は一時三猿斎に呼ばれて備前の虫明焼の窯で
作品を作っている、長男長平も四男寅之助も行ったと強く云い切る。長男長平は父長造の来窯に伴わ
れてきたか、海浜生活をさせたいため後に呼び寄せたものか。」
と、書いて初代真葛長造の来虫を肯定しています。
清風与平の件も でしたが、桂又三郎は、「二代○○」と、創作（仮定）する癖があるようです ☆
このＨＰでは、池上千代鶴の虫明焼研究に順じて、初代楽長造の来虫を採っています。
次は、［備前虫明焼］７８ページの「真葛宮川香山」からです。
これまで、虫明焼研究大家の池上千代鶴と、桂又三郎の考えが異なることもありましたが、
真葛香山（まくずこうざん）が虫明に来たのが、明治元年（幕末）ですので、このあたりから、
池上千代鶴と、桂又三郎、二大虫明焼研究家の考え（研究）に相違はなくなります ☆
二人とも虫明焼研究に対して、非常に熱いです ☆
二人の功績が、虫明焼の歴史、陶工（陶芸家・作家）、作品等を、現在に伝えています。
今回はこれで終わって、次回に７８ページの「真葛宮川香山」から、読みたいと思います。
「蓼純Ｃｏｌｌｅｃｔｉｏｎ」の頁には、初代真葛長造の抹茶碗をＵＰしました。
私・蓼純は、初代真葛長造の抹茶碗を、三つもっているのですが、
いずれも、「真葛」印のみで、「むしあけ」印は、有りません ☆
このうち、一番虫明っぽい・雁を鉄釉で描いた抹茶碗を、ＵＰします ☆
高台内の躍りベラは、真葛長造ならではの、心地よいリズムを刻んでいます。
共箱には、「御室寫 雁之画」と、箱書されています。
御室焼（おむろやき・仁清焼）とは、
江戸初期に、仁和寺門前で野々村仁清（ののむらにんせい）が、創始した焼きものです。
真葛長造は、仁清写しの名手と言われていた人でもあります。
〔第58回〕 ２０１３.１０．０１
いつの間にか、すっかり、秋になっていましたね。
今年は、秋刀魚が高いようです。マツタケと比べると、安いですけどね ☆
今回は、［備前虫明焼］を再び読む・第六話です。
［備前虫明焼］７８ページ。「真葛宮川香山」からです。
からですが、・・・
このＨＰ「虫明焼の栞」 も、１０月１０日で１０周年を迎えます。（パチ、パチ、パチ、）
１０年も続けている割には、内容が乏しいというのは、自他ともに認めている所です ☆
内容が乏しくても、一応１０周年ですので、ささやかな記念品を差し上げたいと思います。
「虫明焼の栞１０周年記念プレゼント」 です。
１０月２０日（日）までに、下記メルアド宛に、送信（応募）してください。
＜記念プレゼントは、締め切りましたので、メルアドは削除しました。＞
広告メールと誤って削除しないように、件名欄に、「虫明１０」と書いてください。
当選者には、こちらから返信メールを送りますので、その時に住所、氏名を教えてください。
応募者のメルアドを、他で使うようなことは絶対にありません、 ので御安心ください ☆
どちらが一等、二等と言うわけでは有りませんが、
「虫明焼抹茶碗」を一点と、「虫明焼盃２個入り」一点を、抽選のうえ２名様に差し上げます。
１０周年記念の賞品については、あまり期待しないでくださいね ☆
虫明焼抹茶碗は、箱は有りません。すこし古いものになります。物故作家です。
横山香寶以前は、虫明焼の抹茶碗も、共箱でないものがほとんどです。
「むしあけ」印のみで、作者銘（印）は入っていませんので、誰の作？ と、お楽しみください ☆
刷毛目の平抹茶碗（夏抹茶碗）です。たまたま、この抹茶碗が目に入りました。
「夏は、終わった ! 」 と、言っている人は誰ですか。
来年も、再来年も、必ず夏は来ます ☆
盃は、２個入りですが、大、小ではありません。
同じ大きさのものが２個入っています。これは現代作家です。共箱、栞入りです。
先にも言いましたが、賞品には、あまり期待しないでください。節目の記念品ですから。
このＨＰ「虫明焼の栞」は、私・蓼純が岡山市から発信しています。
非常に少数の方にしか、見て頂いていない、マニアックなＨＰですが、
今回の 「虫明焼について・蓼純の虫明焼半可通」 は、面白かったとか、
「今月の抹茶碗」 のページなどで紹介している、イベント情報（虫明焼展）なども、
ＨＰ「虫明焼の栞」 を見て初めて知った、と言ってくれる方もいます。
ヤフオクなどで、虫明焼の説明に、このＨＰの文章を使って下さる方もいます ☆
今まで通り、のんびりと、ゆっくりと、続けていこうと思っていますので、お付き合いください ☆
最近は以前と比べると、美術館・博物館での、虫明焼の展示が多くなった様な気がします。
岡山県の焼きものには、あまりにも有名な、備前焼が有りますが、
美術館・博物館が、備前焼だけでなく、虫明焼にも注目してくれることは、うれしいことです ☆
岡山県立博物館での、真葛香山の虫明焼十二か月抹茶碗。この抹茶碗良かったですね ☆
岡山・吉兆庵美術館の、真葛香山展。この時は、虫明焼も数点展示されていました。
岡山県立美術館では、真葛香山が虫明で焼いた磁器・手付染付樽の比較展示がありました。
野崎家塩業歴史館でも、清風与平、真葛香山、森香洲など、多数の虫明焼が展示されました。
岡山市、倉敷市の美術館・博物館では、虫明焼展をよく開催してくれていますが、
地元の瀬戸内市立美術館では、最近は全く展示されません ☆
瀬戸内市立美術館の学芸員は、虫明焼が好きではない。 ということは想像できますが、
地元・瀬戸内市の美術館ですから、虫明焼展も開催して欲しいところです ☆
瀬戸内市（虫明）には、現在も森香洲、横山香寶の、子孫の方々が住んでいらっしゃいますし、
多くの虫明焼研究・愛陶家も、住まれています。
それに、某瀬戸内市議会議員のＨＰを見ると、
プロフィール欄に、短所は「短気直情」、夢は「虫明焼資料館を作る」と、記載されています。
短所の、「短気直情」については触れないとして、夢が、 「虫明焼資料館を作る」 ことです ☆
「虫明焼資料館を作る」 と、言われるだけのことはあって、虫明焼を一番多く収集されています。
そうです。日本一、すなわち、世界一の虫明焼コレクターです ☆
このように、虫明焼展を開くには、瀬戸内市立美術館は、絶好の条件が整っているわけです。
瀬戸内市立美術館の学芸員の先生。 虫明焼展の開催を、よろしくお願い申し上げます ☆
きょうは、［備前虫明焼］７８ページから、読んでいこうと思っていたのですが、
ＨＰ「虫明焼の栞」 が、１０周年を迎えた、という話から、少し逸れて長くなってしまいました。
今回は、 ［備前虫明焼］を再び読む、 は休んで、次回にいたします。
それでは、「虫明焼の栞 １０周年記念プレゼント」 に、多数の応募を、お待ちしています ☆
〔追記〕
瀬戸内市立美術館に、メールで虫明焼展を開催して下さるように、お願い致しました。
朗報ではありませんが、早速回答をいただきました。
（瀬戸内市立美術館の回答メールから抜粋）
「現段階では当館での虫明焼展の開催は非常に難しい状況にあります。
それは陶芸用の展示ケースや器具を置いていないためなのです。」
〔また追記〕
「虫明焼の栞１０周年記念プレゼント」 に、多数（？）の応募ありがとうございました。
抽選の結果、「虫明焼抹茶碗」は、京都市に御住まいの方、
「虫明焼盃２個入り」は、岡山市に御住まいの方が当選されたので、送付いたしました。
〔第５９回〕 ２０１３.１１．０４
前回は、休みましたが、今回は ［備前虫明焼］を再び読む・第六話 です。
『・・・・・』内は、［備前虫明焼］・桂又三郎著からの抜粋。
［備前虫明焼］７８ページ。 「真葛宮川香山」 からです。
『真葛宮川香山は、初代楽長造の四男で名を虎之助といい、二代楽長造（長平）は長男であるから、
虎之助の兄に当たる。兄長平が歿したので、虎之助は齢十九歳のとき家業を継いだ。』
『虫明焼にとって、真葛と三猿斎を省いては、第一虫明焼そのものの意味がない。また、虫明焼が日本
的に知られたことも、一つに真葛の功績であるから、虫明焼としては非常な恩人といわねばならぬ。』
虫明焼は、真葛香山の卓越した感性と技術で造った作品を、代々の陶工（陶芸家・作家）が
写してきたわけです。
たしかに茶陶虫明焼が、現在もなお評価されているのは、真葛香山がいたからです。
『真葛がいつごろ虫明に行ったかというと、明治元年ごろと思う。そして三年の春京都へ引き揚げて
いった。だから大体約二年滞在していたわけである。』
桂又三郎が書いている通り、「真葛香山は、明治三年の春京都へ引き揚げていった。」
と、言うのが定説でした。
この定説をくつがえしたのが、以前このＨＰ・〔第５４回〕などで紹介した、英国染付樽です ☆
英国染付樽の鏡（蓋）部分に、「庚午 桐月 香山」と、制作年などを、ゴスで書いています。
英国染付樽の染付から、庚午（かのえうま）・明治３年（１８７０年）の桐月（とうげつ）・７月までは、
真葛香山は、虫明に滞在していた。と考えるのが自然です。
このＨＰ・「虫明焼の年表」なども、明治３年（１８７０年）の初秋に虫明を離れた。 と、訂正いたしました ☆
続いて、［備前虫明焼］９３ページ。 「作品」 です。
『真葛宮川香山が間口窯で焼いた作品は、主として御本写しに鉄釉で絵付けしたものであるが、しかし
磁器の染付や赤絵金襴手なども焼いている。絵付けも、御本写しはほとんど真葛自身が筆をとっている
が、染付ものは多く菊渓幽人という南画家が描いている。茶碗でいえば、薄作のものが多く、姿も各種変
化に富んでおり、高台は比較的高めのものが多い。また、高台内の削りに特徴があって、多く一部でヘラ
を止めて削りに段を付けている。水指には仁清風の細水指が多く、ことに月に雁の絵付けのものに名作
がある。そして花生けはほとんど焼いていない。』
と、真葛香山の作品について、桂又三郎がうまく纏められています ☆
「虫明では、花生けはほとんど焼いていない。」 と、書いています。
真葛香山は、横浜へ行ってからは、逆に、ほとんどの作品が花入れ（花瓶）です ☆
横浜では、最初は薩摩写しの花瓶、続いて高浮き彫りの花瓶、そして釉下彩の花瓶です。
真葛香山・横浜焼の花瓶は、輸出専用です。大きな花瓶が多いです。
花を入れない、花を生けられない、観賞用の花瓶を一対にして、輸出しました ☆
この輸出した花瓶を、真葛香山の研究・愛陶家などが、今現在も里帰りさせています。
高価で、豪華絢爛な花瓶ですので、米国、英国などでも、大事にされていたのでしょうね。
壊れやすい高浮き彫りの花瓶が、ほぼ無傷で里帰りしているのは、嬉しい限りです ☆
つぎは、［備前虫明焼］９４ページ。 「十二カ月茶碗」 です。
『お茶は季節感が重要で、冬は冬らしく、夏は夏らしいものを使用することが、茶道の伝統になっていた。
そうした季節のものを十二カ月に割ったものが、虫明焼の十二カ月茶碗であり、また節句を五つに割った
ものが、五節句の茶碗で、これらは虫明焼の代表的な作品である。』
『明治中ごろ、伊木家所蔵のこの茶碗が入札で、岡山市の山上家に入った。それを森香洲が借り受けて、
写を製作した。』
虫明焼の十二カ月茶碗は、桂又三郎が書いているように、虫明焼の代表的な作品です。
真葛香山が造った・虫明焼の十二カ月茶碗を、森香洲が写しています。
それを、横山香寶、岡本英山、黒井一楽などが写してきました。
現在も十二カ月茶碗は、虫明焼の代表的な作品として制作されています。
このＨＰ・「今月の抹茶碗」 では、森香洲の虫明焼十二カ月茶碗を、毎月載せています ☆
岡山県立美術館（県美）は、岡本英山の虫明焼十二カ月茶碗、五節句抹茶碗を所蔵されています。
時々、県美の企画展等で展示していますので、機会があればご覧になってください。
写真を見たい方は、県美のホームページで、ご覧になれます。
つぎは、［備前虫明焼］９８ページ。 「五節句茶碗」 です。
『真葛が虫明で使用した土に二通りあり、淡い朱色をした柔い胎土と、灰白色をしたやや堅めの土である。
この五節句の土は、後者の土で、地釉は土灰釉で、淡い萌黄色をしており、絵は茶褐色鉄釉である。』
五節句抹茶碗は、先の十二カ月抹茶碗の簡易版のようなものです ☆
正月・七草、三月・雛、五月・端午、七月・七夕、九月・重陽の五つの節句です。
［備前虫明焼］９９ページには、真葛香山の五節句抹茶碗の写真が載っています。
［備前虫明焼］１００ページ。 「三猿斎好み短瓢水指」 に進みます。
少林寺蔵の、掛分け水指です。写真が載っています。
『胎土は淡灰色の堅い手であるから、後期の作品である。』
と、桂又三郎が書いていますが、これは、違うと思います。
土（粘土）は、掛ける釉薬の色（作品の色）によって選びます。
ですから、白濁釉を掛けた・少林寺蔵の掛分け水指は、白っぽい土（粘土）を選んでいます。
淡灰色の土は後期の作品とか、朱色の土は前期の作品、との判断は誤りだ。 と私は思います。
それに、前期の作品だ、後期の作品だ、と言っても、
真葛香山が、虫明に滞在したのは、２年間位ですからね ☆
もちろん、真葛香山が使用した土（粘土）と、森香洲が使った土（粘土）は違います。
横山香寶、岡本英山が使用した土（粘土）も、それぞれ違います。
ですから、土（粘土）を見て、時代・作者を推定することを、否定するわけでは有りません。
むしろ、私・蓼純は、銘（印）は見なくても、土（胎土）は必ず見ます ☆
そうですね、今回は、土（粘土）と、釉薬の関係を、見ていただくために、
「蓼純Collection」のページには、五寸皿をUPします。五客揃いです。
白釉を掛けたものが二客と、黒釉（なまこ釉）を掛けたものが三客ですので、
土（粘土）と、釉薬の関係が、納得していただけると思います ☆
優雅で、遊び心満載の踊りベラも、ご堪能ください ☆
次は、同じく１００ページの、 「瓢茶入」 です。
『真葛専用の「むしあけ」印が押されている。』
と、書いています。
写真が載っています。東京国立博物館（東博）蔵です。
この瓢箪形茶入れの、写真の見どころは、「印」です。
茶入れ自体の姿（形）もですが、桂又三郎の言う・真葛専用の「むしあけ」印が見どころです。
真葛香山の虫明焼作品と言われている内の、ほとんど全部が贋作（ニセモノ）だ。
と、このＨＰで、何度も お話いたしました ☆
統計を取っていない数字で恐縮ですが、私・蓼純は、９８～９９％がニセモノだ、 と考えています。
逆に言うと、真葛香山の本物の虫明焼作品は、僅か１～２％しか無いということです。
そして、東博の茶入れに捺している・「むしあけ」印のみが、真葛香山が虫明で使った印である。
と、言うことも、何度も お話いたしました ☆
先の、少林寺蔵の水指も、東博の瓢茶入れと同じ 「むしあけ」印 を、捺しています。
昨年の春に、岡山県立博物館（県博）に展示された、真葛香山作の十二か月抹茶碗を紹介いたしました。
この十二か月抹茶碗の「むしあけ」印も、東博の瓢茶入れに捺している「むしあけ」印と同じです。
県博の学芸員も、 「香山作の東京国立博物館蔵、瓢箪形茶入れに捺している銘（印）、そのものである。」
と、言われました。
以前、「蓼純Ｃｏｌｌｅｃｔｉｏｎ」のページに、真葛香山の虫明焼作品を数点ＵＰいたしました。
これらも、東博の瓢茶入れに捺している 「むしあけ」印 と、同じです。
さらに言うと、［備前虫明焼］の、表紙（ハードカバー）デザインを見てください。
瓢茶入れの 「むしあけ」印 が、描かれています。
桂又三郎も、真葛香山が虫明焼作品に捺した 「むしあけ」印 は、この「むしあけ」印だけだ。
と、確信していたから、表紙のデザイン（装丁）に、使ったのだと思います。
長くなりましたので、今回は、これで終わって、続きは次回といたします。
寒くなってきますが、お体に気を付けて、青春を謳歌してください ☆
〔第６０回〕 ２０１３.１２．３１
今回は、 ［備前虫明焼］を再び読む・第七話 です。
『・・・・・』内は、［備前虫明焼］・桂又三郎著からの抜粋。
［備前虫明焼］１０３ページ。 「磁器染付酒注」 です。
『磁質のあがりはやや見劣りがするが、染付の画はよく描けている。蓋の部分に「午初春於虫明陶竃
楠渓幽人画之」とあり、高台に「大日本真葛造」と染め付けている。』
この真葛香山の虫明焼作品・磁器染付樽は、岡山県重要文化財に指定されています。
写真が載っていますが、モノクロで分かりにくいですね。
［小さな蕾］２００１年６月号などにも、カラー写真が載っていましたが、
［邑久町史・文化財編］の１５１から１５３ページに載っている、カラー写真が一番良いです。
最近では、岡山県立美術館（県美）に、英国染付樽と並べて展示されました。
このＨＰでも、紹介いたしましたので、県美で、ご覧になられた方も多いと思います ☆
桂又三郎は、染付樽の「磁質のあがりはやや見劣りがする。」と、書いています。
磁質が良くないのは、英国染付樽も同様です。
英国染付樽の所有者は、「完璧な磁器ではない。金メッキならぬ、磁器メッキです。」
と、言っています。磁器メッキとは、言い得て妙ですね ☆
すでに何度かお話いたしましたが、どちらの染付樽にも制作年（明治３年）が入っています。
次は、［備前虫明焼］１０４ページ。 「磁器染付三つ盃」 です。
『磁器染付三つ盃は、比較的数多く伝世されている。絵は多く梅とか菊などの四君子を描いているが、
なかには雪月花の文字を一字ずつ書いたものもある。銘はいずれも染付銘』
以前・ 〔第５１回〕 〔第７１回〕 （写真有り） などに三つ重ね盃をご覧いただきました。
〔第５１回〕 の盃は、「雪月花」ではなく、「戀（恋）月花」と、染め付けられていました。
真葛香山の虫明滞在時は２０代半ばですので、京都の娘が、忘れられなかったのでしょうか、
それとも、虫明の田舎の娘に恋したのでしょうか、 などと お話したことが有りました ☆
三つ重ね盃は、大中小の三つが一組になっているので、酒好きは大盃の取り合いになりそうですね ☆
［備前虫明焼］108ページ。 「絵付飯茶碗」 です。
『胎土は鉄分の多い茶褐色の土で、それに白釉を部厚くかけ、菊渓幽人が好んでよく描いている葉っぱ
をコバルトで染付している。』
同じページに、モノクロの写真が載っています。
備前の土（粘土）は、鉄分が多いことで有名ですが、虫明の土も、同じ様に鉄分が多いです。
鉄分が多い茶褐色の土を、使っているために、白釉を厚く掛けています。
白釉を厚く掛けたのが、良いですね。
磁器とは、また違う良さが有ります。
前にも言った事があると思いますが、私・蓼純も、この飯茶碗が大好きです ☆
蓋付とは書いていませんが、当然、蓋付飯茶碗なんでしょうね。
そうですね、「蓼純Ｃｏｌｌｅｃｔｉｏｎ」のペーにも、飯茶碗をＵＰしてみましょうか。
真葛香山の飯茶碗はもっていませんが、森香洲の飯茶碗です。
乾山写しの桜絵・飯茶碗です。良い飯茶碗です。
鉄釉（銹絵）で桜の幹と葉、白釉で花を描いています。
これは、五客揃いだったんですが、私の父が、「小振りの抹茶碗として使える。」と言って、
一客づつ四人の方に、プレゼントしてしまいました。
四人の方には喜んでいただけたのですが、いま我が家に有るのは一客だけです ☆
見立て抹茶碗、として差し上げていますので、蓋は五つとも残っているのですが・・・
蓋は銘々皿に使えないことも有りませんが、飯茶碗の蓋なので絵が表面ではなく、底に来ます。
それに、いくら良くても、飯茶碗の蓋は飯茶碗の蓋であって、銘々皿では有りませんし、
また、飯茶碗は飯茶碗であって、抹茶碗としてみたら弱いですね ☆
「蓼純Ｃｏｌｌｅｃｔｉｏｎ」のペーに、写真を載せましたのでご覧ください。
［備前虫明焼］１０９ページの、 「横浜・真葛窯の作品」 に進みます。
『真葛香山が制作した白磁の子安観音（高さ五九・一糎）が焼成中、背部に大きな傷ができたので、
それを弟子の森香洲に与えた。その作品は白一色で、釉薬をかけて艶を出したところと、生地その
ままで艶のない部分とで、明暗、気分などを表現しており、なかなかの傑作である。』
と書いて、子安観音の、モノクロ写真を載せています。
真葛香山が虫明で制作したものではなく、横浜で造ったものです。
森香洲が、横浜の真葛香山の窯に行っていたときに、もらったものなんでしょうね。
窯疵が有ります。 と言うか、窯疵が有るから、頂けたようです。
この白磁子安観音は、あの悪名高い、 ではなくて・・・、 あの高名な、
「開運なんでも鑑定団」 が、邑久町に来たときに、鑑定に出されたことが有ります。
この時の鑑定額は、７００万円でした ☆
鑑定額は、ともかくとして、窯疵があっても、とても良いものです。
区切りが良いので、今回はこれで終わります。
寒くなりましたが、風邪をひかないように、してくださいね ☆
年末から正月は、故郷に帰られる方もいらっしゃいますか。
何でもない会話なんでもない笑顔なんでもないからふるさとが好き 俵万智（たわらまち）
「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ 俵万智（たわらまち）
２０１４年が貴方にとって、良い年となりますよう 願っています。
〔第６１回〕 ２０１４.０６．０１
皆さま、お元気でお過ごしでしょうか。
更新が少～し（？）遅くなりました ☆
更新しょうかな、と思っていた時に、パソコンが壊れてしまいました。
マザーボードと、電源ユニットというものを交換しました。
月も替わり、日曜日ですので更新してみます ☆
さて、さて、 ［備前虫明焼］を再び読む・第八話 です。
『・・・・・』内は、［備前虫明焼］・桂又三郎著からの抜粋。
１１２ページの、 「再び御庭窯から民窯へ」 から読んでいきます。
『幕末の世相や藩の武備の近代化などの問題から、三猿斎もお庭窯を民営に移管して国産奨励の一助
にもしたかった。そこで、文久三年（二年とも）虫明の郷士森角太郎に窯を譲って、その経営を一任した。』
虫明窯の民営化は、「文久三年（二年とも）・・・・・」と書かれていますが、
［県工芸史稿本］、 ［邑久郡史］ などに記されている通り、文久２年（１８６２年）３月が正しいと思います。
なお、虫明の郷士森角太郎とは、森香洲（もりこうしゅう）の実父のことです。
森角太郎（もりかくたろう・１８２５年～１９０６年）に窯を譲って、民営化したわけですが、
１００％民営化かと言うと、そうではなかったと思います。
翌年・文久３年（１８６３年）には、玄々斎の依頼で三嶋写しの角水指をこの窯で造っています。
そして、明治元年（１８６８年）には、京都から真葛香山（まくずこうざん・宮川香山）を呼んでいます。
これらは、伊木三猿斎（いぎさんえんさい）の力によるところが大だった。 と思います。
ただ、民営化してから、雑器が多く作られたということは、容易に想像できます。
事実、森角太郎窯には、雑器が中心の野田焼（兵庫県）から、野田焼の陶工（陶芸家・作家）の、
赤松平右衛門（あかまつへいえもん）、永田宗右衛門（ながたそうえもん）が従事しています。
この二人については、 ［府県陶器沿革陶工伝統誌］ （明治１９年）にも書かれています。
虫明で野田焼の陶工（陶芸家・作家）によって造られたであろう、
コネ鉢（大皿、大鉢）、片口、徳利などが現在も数多く残っています。
野田焼は、青木重雄著の ［兵庫のやきもの］ などに書いているように、いわゆる雑器の窯です。
私・蓼純は、雑器も大好きです ☆
虫明焼が好きな方も、茶器でなければ、しかも共箱か、家元の箱書きが・・・
と言う方が、殆どのようです。
そういう人たちに、虫明の雑器を見せても、あまり喜んでいただけません ☆
それに、虫明焼の雑器だと説明しても、理解していただけないことがよくあります ☆
焼きものを楽しむと言うよりは、銘(印)、箱書き を最重要視し、価格を楽しまれる方が多いように感じます。
次に進みます。 ［備前虫明焼］ １１４ページに 「伊木氏」 、１１５ページからは 「三猿斎」 です。
１３３ページまで、伊木三猿斎のことを書いています。
伊木三猿斎については、以前に何度もお話していますので、今回は省略いたします ☆
［備前虫明焼］の１３３ページ、「菊渓幽人と楠渓幽人」を読んでみます。
『真葛作の染付ものに、南画風の筆法で絵付けしたものがある。それは菊渓幽人画之と書銘されている。
この菊渓幽人の正体であるが、資料が全然なくて分らない。』
桂又三郎は、［備前虫明焼］には、 「菊渓幽人の正体は、分らない。」 と、書いています。
しかし、［岡山の焼物］・桂又三郎著７２ページには、
『三代清風与平の実父清山菊渓幽人も・・・』 と、明記しています。
［岡山の焼物］ の発行年月が１９６４年１０月。 ［備前虫明焼］ の発行年月が１９６６年１月です。
一年以上前に発行した・文庫本 ［岡山の焼物］ に、「菊渓幽人は三代清風与平の実父清山である。」
と断定しているにも関わらず、 ［備前虫明焼］ には菊渓幽人の正体は、分らない。 と書いています。
［備前虫明焼］の原稿を書いてから、製本まで二年ぐらい掛かった、ということなのかもしれません。
『楠渓であるが、楠渓の絵は磁器染付の酒注に南画の風景画を描いており、これが唯一の資料で他に
絵付けをしているものを見ない。』 と、書いています。
南画の風景画を描いた「磁器染付の酒注」と言うのは、岡山県重要文化財(県重文)の手付染付樽です。
[邑久町史・文化財編] の写真が良いのですが、[備前虫明焼] で言いますと、１０３ページ第５２図に
モノクロ写真が載ります。
確かに 「楠渓」 銘の入ったものは、現在までに県重文の手付染付樽しか判明していませんが、
某虫明焼研究・愛陶家が所持している・磁器染付の 「葛雄」 銘の入った急須も、同じ感じの絵付けです。
ただ、 「楠渓」 が誰なのか、判明していません。
県重文に手付染付樽を申請した時に、絵付けは、 「春木楠渓」 としているようです。
しかし、この「春木」と言う名前がどこから出てきたのか、実在した人物なのかどうかも判りません ☆
私・蓼純は、県重文の手付染付樽の絵付けも、真葛香山自身が描いたのではないのかと想像しています。
このＨＰ 〔第４７回〕 などで紹介いたしました・英国で発見された染付樽(英国染付樽)と、同じ人物の絵付け
だと思います。
英国染付樽の絵付けは、 「香山」 銘が入っているので、真葛香山です。
私の想像ではなく、 「楠渓」 が誰なのか判明すればいいのですが、
虫明焼の二大研究者である・池上千代鶴、桂又三郎をもってしても、解明できていません。
なんだか暑くなって来ましたので、今回は、ここまでに致します ☆
体が暑さに慣れてないせいもあって、快適ではないですね。
〔第６２回〕 ２０１４.１０．１４
今年は、残暑が短かったので、コスモスが長く楽しめますね ☆
［備前虫明焼］を再び読む・第九話 です。
『・・・・・』内は、［備前虫明焼］・桂又三郎著からの抜粋。
［備前虫明焼］１３５ページの、 「無名の陶工」 からです。
『虫明窯で陶工を雇い入れるようになったのは、恐らく天保年間のことであろう。備前焼似せもの事件の
一件記録に竜野焼物師 「兵右ヱ門」 の名が出てくる。』
『文久三年森角太郎が間口窯を譲り受けたときも、野田焼の陶工が二人来窯しており、また虫明焼の陶土
は、以前から播州二見の土を使っていた。したがって虫明焼の雑器は、とくに竜野焼や野田焼の影響を
受けたものが多い。』
と、書いています。
以前に、何度かお話いたしましたが、茶陶は、京焼の影響を受けており、
雑器は、野田焼（兵庫）の影響を受けています。
野田焼の素朴な絵付け、筒描き、流し釉の技法に習っています。
次は１３６ページ、 「掛け分け」 です。
掛け分け徳利の、モノクロ写真が載っています。
上段・第８７図が、太田巌蔵となっています。
太田コレクションなら、［邑久町史・文化財編］のカラー写真を見てみましょうか。
左側の竹を描いた・小さい徳利は、［邑久町史・文化財編］１７１頁１７に載っています。
右側の梅の絵の徳利は、・・・
この徳利も太田巌蔵ですが、太田コレクションには、入ってなかったんですね。
この徳利は、掛分けでは有りません。
私・蓼純も、同じ形の徳利をもっていますので、ここにＵＰしておきます。
髙さが３２ｃｍ。容量が2Ｌくらいです。
<写真は、虫明梅絵一升徳利>
そして、「蓼純Ｃｏｌｌｅｃｔｉｏｎ」のページには、掛分け徳利を載せておきます。
よろしければ、「蓼純Ｃｏｌｌｅｃｔｉｏｎ」のページを、ご覧になってください ☆
太田巌コレクションの掛分け徳利は、五合徳利ですので、小さいですが、
この掛分けは、一升徳利です。上の徳利と、ほぼ同じ大きさです。
掛分け徳利も、最近はあまり見ないですね。少なくなってきました。
長い年月には、思わぬ破損があります。
ロクロで薄く挽くのが虫明焼です ☆
掛分け徳利も、薄く挽いています。外と内側に釉薬を掛けていますが、
釉薬を込めても、３ミリ未満の厚さです。
３ミリ未満の厚さと言うのは、私も誤って割ってしまったことがありますので、実測です ☆
掛分け徳利については、以前・第１０回などでお話しています。
それでは、１３８ページの、 「筒書き手」 に進みます。
『筒書きの技法は、竹の筒に白釉などの釉薬を入れて、それを傾けながら描く。』
『この筒書きの陶技も、野田焼の陶工の指導によるものと考えられる。』
１３９ページ・第９１図に、職人が筒書きをしている写真が載っています。
通い徳利などに屋号、通し番号、地名を、白釉あるいは鉄釉で一気に書きます。
手慣れた職人の技ですね ☆
玄人（プロ）の気迫が伝わってきます。
このような技法も、通い徳利の需要がなくなったことにより、ほとんど行われなくなりました。
私・蓼純も、筒書き手の虫明徳利を何本かもっていますので、機会があれば、また・・・
１４１ページの、 「流し釉」 に進みます。
『この技法は虫明の窯では、主として間口窯の作品に多く用いられたもので、作品の種類は、
やや大型で一升入りぐらいの撫四方の徳利に用いられている。』
『この流し釉は、白釉か鉄釉・ナマコ釉に限られており、信楽のように青釉（たんぱん釉）を流した
ものは無い。そしてこの技法は、明治以降、つまり香洲以降には用いられていないようだ。』
「青釉（たんぱん釉）を流したものは無い。」 と書いていますが、そうでもないですね ☆
「天保十二年雲子」と刻印の、太田コレクションの池奥窯水盤。
この池奥窯の水盤は、タンパン釉を流しています。
ほかにも池奥窯には、花入れ（花瓶）などタンパン釉を流したものが有ります。
また、「この技法は、明治以降、つまり香洲以降には用いられていないようだ。」 と書いていますが、
森香洲（もりこうしゅう）、横山香寶（よこやまこうほう）なども、流し釉の技法は、よく使っています。
岡本英山（おかもとえいざん）も、甕などに釉を掛け流しています。
岡本英山の流し釉作品も、いくつか見ましたが、釉の掛け方が意外に思い切りが悪いですね ☆
太田コレクションにも、流し釉の技法を使った虫明焼作品が数点あります。
［邑久町史・文化財編］ のカラー写真を見てみます。
［邑久町史・文化財編］ １７０ページ１４、１５の 「古虫明手焙り」 、１７１ページ１６の 「古虫明燭台」、
１７３ページ２２の 「古虫明白黒掛流し大花入れ」 、ほかにも徳利、鉢などが載っています。
どれも、いいですね。先程お話した 「池奥窯の水盤」 も１８９ページに載っています。
私・蓼純も、流し釉の四方大皿・尺二寸（３６㎝）を、焼いたことが有ります。
今は亡き・森香泉（もりこうせん）に、褒めていただいた作品です ☆
またいつか、お見せできましたら、笑ってやってください。
［備前虫明焼］に戻ります。１４６ページ、 「沢村東左」 です。
『東左は明治十年ごろ虫明へ行ったものであろう。作品も非常に少なく、土地の人々も殆んど東左の
ことを知らないから、余り永く虫明で焼いていたのではあるまい。』
桂又三郎が書いているように、澤村東左（さわむらとうさ）の虫明焼作品は少ないです。
澤村東左は、京都の三代清水六兵衛の弟子です。
三代清水六兵衛に師事しただけのことはあって、技工は優れています。
同じ１４６ページに、モノクロ写真が載っていますので見て下さい。
第１０９図の沢村東左作、白釉富士の絵茶碗です。
黒井一楽（くろいいちらく）蔵ですね。
私・蓼純も、 「東左」 銘（印）の入った水指、抹茶碗、酒盃を何点か、もっています。
澤村東左については、以前・ 〔第３８回〕 などで、お話していますし、
「蓼純Ｃｏｌｌｅｃｔｉｏｎ」のページに、「東左」釉銘（ゴスのサイン）の磁器染付酒盃、
「東左」 銘（印）の入った水指を、以前に載せたことがありました。
「東左」 の銘（印）は、五角形の枠の中に「東左」と彫られています。
１４７ページ、 「森葛雄」 です。
『明治元年に、真葛宮川香山が来窯したのを機会に、森角太郎とその子彦一郎、久本葛尾などが
陶技の指導を受けた。それまで角太郎は経営者であったが、それより経営者と陶工を兼ね、そして
真葛の葛一字をもらって葛雄と号した。』
「真葛香山に指導を受け、それより経営者と陶工を兼ねた。」 と、あります。
森角太郎が、真葛香山に指導を受け、「葛雄」と称したということは、私も否定はしません。
しかし、陶工（陶芸家・作家）と言えるほどの、技術の習得は、なかったと思います。
森角太郎は、この時すでに４３歳であり、経営者と陶工（陶芸家・作家）を兼ねたと言うのは、
不自然です。
森角太郎（葛雄） の作品が、１４７ページの第１１０図、１４８ページの第１１１図、に載っています。
この二つの作品を見ても、趣味（お遊び）の領域を越えていないと思います。
１４８ページには、 『真葛香山は帰ったが、森葛雄は工房を拡張したり、職人を入れたりなどして、
ますます虫明焼のために努力した。』
と、書いています。その通りですよね。
明治１０年代前半まで、虫明焼が栄えたことは、岡山県勧業課年報を見ても判ります。
虫明焼が明治１０年代前半まで栄えたのは、森角太郎の努力の賜物です。
それでは、今回はここまでにいたします。
次回は、１５０ページの第四期・香洲窯から読んでいく予定です。
〔第６３回〕 ２０１５.０８．１５
ご無沙汰しています ☆
前回の更新から、１０か月経ってしまいました。
１０か月も空けますと、前回までと文脈、文体が変わってしまいます。
（ 文脈、文体なんて、いつもバラバラだろう！ と言っている人は、誰ですか？ ）
［備前虫明焼］を再び読む・第十話 、スタートでーす ☆
『・・・・・』内は、［備前虫明焼］・桂又三郎著からの抜粋。
えーっと、どこからだ・・・ (？)
［備前虫明焼］１５０ページの、 「第四期・森香洲窯」 「第一次香洲窯」 からでした ☆
『弘化四年から約三十カ年続いた間口窯も、ついに明治十三年春、やむなく廃窯するに至った。
そこで森香洲は、明治十三年十二月、旧師の真葛宮川香山をたよって単身横浜へ出かけた。
そして同十五年四月郷里の虫明へ帰り、再び窯に煙をあげていたが、ついに経営が成り立たず、
明治十九年の春、窯場一切を黒井覚弁氏に提供してその経営を譲り、自身は単に陶工として作陶
に従事していたが、これもうまくいかず、その年の秋再び真葛をたよって横浜に行った。』
と、書いています。
次は１５３ページの、 「備中酒津窯」 です。
『「焼もの趣味」の池上氏の記事によると、明治二十六年裳掛村出身の渡辺祐吉は、酒津の窯に於
いて輸出向きのものを計劃した時、香洲を横浜より招いた。然し渡辺の事業には粗漏あり失敗に帰し、
香洲は留まる事一年にして虫明に引き上げた。』
と 桂又三郎が、池上千代鶴の［焼もの趣味］の記事を、引用しています。
酒津窯（さかづ・酒津焼）は、現在も岡山県倉敷市酒津で焼かれています。
いま、 「酒津焼きの美」 という展覧会が、倉敷市立美術館で９月２３日（水）まで開催されています。
私・蓼純も観覧しました。
酒津と一口に言っても、広範囲に窯があったようです。
森香洲が居たのは、酒津の西山窯です。
西山窯作品には、森香洲の焼きものに対する理念が生きています。
同じく１５３ページの、 「第二次香洲窯」 です。
『森香洲は虫明焼の再興を種々企画したところ、幸に趣味家で土地の有力者が協力してくれることに
なったので、明治二十八年合資会社を創立して再び窯を焼くことになった。』
『それについて前記 「焼もの趣味」 に池上氏が次のような記事を載せている。明治二十八年、合資組
織にて振興を策した。香洲は職長に推され約六年程精進を続けた。香洲は真葛の元にてこの道を
充分攻究した直後とも云へるし、又出資者何れも趣味家揃ひで、気分もシックリ合ひ、能率主義より
は味の陶器に着眼した。此時に香洲一生を通じて最も油の乗った仕事をしたと考へてよく、虫明固
有の味を漂した香洲の代表的雅品の多くは此時代に生まれたのである。此の経営も時流を超越して
居つた為め、惜くも明治三十二年頃から廃窯の憂目を見た。』
と、桂又三郎が池上千代鶴の文を引用しています。
１５４ページには、虫明焼十二カ月抹茶碗の絵と、説明が載っています。
これは、このＨＰ「今月の抹茶碗」で毎月紹介しているとおりです ☆
１５５ページの、 「第三次香洲窯」 です。
『前記 「焼もの趣味」 の池上氏の記事によると、明治三十八年に至り、香洲は共同にて巨窯の荒廃を
憂ひ再興を謀り、約七年継続した。』
と、ここでも桂又三郎が池上千代鶴の文を引用しています。
同じく１５５ページの、 「軽井沢三笠窯」 です。
『森香洲が真葛香山をたよって、三度目に横浜に行ったのは、大正二年四月で、単身で虫明を立った。
たまたまそのとき、真葛香山が、かつて明治三十八年六月に築窯した軽井沢の三笠焼の経営者
から陶工を頼まれていたので、それへ香洲を紹介して就職させた。なお軽井沢は、冬はとても寒くて
仕事にならないので、十一月に一たん横浜に帰り、また翌年、即ち大正三年五月に再び軽井沢へ
出かけ、同年秋虫明へ帰った。』
と、書いています。
軽井沢（三笠焼）で、森香洲が造った抹茶碗が載っています。
１５６ページ第１１７図の、 「あさま」 「香洲」 印 併用の黒釉抹茶碗です。
森香洲の師・真葛香山も、この窯で制作していますが、私・蓼純が見たのは、 「あさま」 印ではなくて、
「三笠」 印と 「真葛」 印を併押した、青磁の菓子鉢です。
１５７ページの、 「第四次会社窯」 です。
『大正七年備前焼の生産販売と同時に、当時廃窯していた虫明窯も引き受け、虫明焼も生産する
ということで、備前焼陶器株式会社を創立した。そのとき森香洲が職長となって、職人を他に二人
雇い、久しぶりに窯を焼いた。大正九年四月、岡山県物産館で日用品陳列会が催され、「山陽新報」
が次のように報ぜられている。「工業品部類中、陶器の出品にては虫明焼が最も特徴を有し、観覧者
の目を惹くに足るべし、出品類は片口、丼、壺類、花瓶、徳利、盃、湯呑等大部分を占むる。」』
『香洲は、大正七年以来専心作陶に熱中していたが、惜しくも大正十年十二月、多難な人生に終りを
告げた。因みに、同会社は大正十三年ごろ全く廃窯した。』
１５９ページに、 「窯址より発掘の会社時代の銘款」 が、載っています。
私・蓼純は、一番上の銘款（ギザギザの太枠の中に「備前」）を捺した鉢を持っていますので、
「蓼純Ｃｏｌｌｅｃｔｉｏｎ」のページに、ＵＰしておきます ☆
大したものでは有りませんが、もしよろしければご覧ください ☆
１６０ページの、「作品」に進みます。
『森香洲の作品は主として茶陶。香洲はロクロも非常に上手で、抹茶々盌はことに薄作の美事なもの
がある。抹茶々盌は、高台脇に二、三段ヘラを入れて鋭い感じを出しており、また多く切高台に造って
いる。もっとも、切高台は真葛以来の伝統で、香洲以後も切高台は多い。黒釉は自慢中の自慢で味の
深い釉調をしている。土も味わいのある土味をしている。茶盌では十二カ月が代表的なものであり、
また虫明焼の表看板にもなっている。水指はやはりなんといっても、月に雁の細水指がその代表作
であろう。』
「黒釉は自慢中の自慢で味の深い釉調をしている。」と、書いています ☆
それでは、私・蓼純がもっている・森香洲の黒釉抹茶碗の写真を、下に載せておきます。
正面に、油滴が入っています。
入れたんじゃなくて、入ったんでしょうね ☆
黒い抹茶碗は、お茶の緑が映えます。
これが、森香洲です。これが、虫明焼です。
１６１ページ 「松茸形菓子器」
第１２３図が、香洲作の「松茸形菓子器」の写真です。
『類品がなく非常に珍しい。』
珍しいのでしょうね。私・蓼純も、見たことがありません ☆
１６２ページの写真が、「若松四方水指」
昭和七年十一月彩華社発行の ［日本名陶選］ 脇本楽之軒選に、虫明若松文様水指が選ばれました。
この写真は、１６２ページ第１２４図に載っています。
いい水指ですね ☆
これは、 「むしあけ」印 「香洲」印 を捺した森香洲作の水指なのですが、
選者の脇本楽之軒が、「真葛長造の所造と断じて誤あるまい。」 と、誤鑑定したほどの作品です。
高草藍山（たかくさらんざん・高草平助）も、 「この水指は姿の優美、文様の若松繪、ロクロ目や白釉の
ナダレにまで入念な技巧を驚かぬわけには行かない。」 と、評価しています。
１６７ページ、 「香洲と真葛」 に進みます。
『香洲は真葛に徹頭徹尾世話になっている。世間一般の師弟の間柄といったようなものではなく、親
子以上の愛情があったと思われる。香洲を軽井沢の三笠窯へ紹介したときの手紙二通を掲載して、
真葛と香洲との関係を明らかにしたい。』
と書いて、手紙二通の内容を掲載していますが、手紙は省略いたします ☆
もし興味があれば、 ［備前虫明焼］ １６７ページからに載っていますので、ご覧下さい。
１６９ページ、「香洲と覚弁」に進みます。
『覚弁は虫明黒井山等覚寺の住職で、虫明焼の大きな後継者でもあった。覚弁は慶応三年虫明
等覚寺の住職となり、のちに総本山の管長にまで出世した。大正十三年三月歿した。』
『香洲も覚弁をとくに尊敬し、また頼りにもしていた。大正二年、香洲が虫明で三度目の失敗を重ね
て、横浜に行き真葛の紹介で、軽井沢の三笠窯に落付いたときの手紙のうち二通を掲載して覚弁
との関係を明らかにしたい。』
と書いて、ここでも、手紙二通の内容を掲載していますが、ここでも省略いたします ☆
急いで進みましたが、これで取りあえず森香洲を終わります。
少しややこしくなりましたが、このＨＰ 「虫明焼の年表」 にも落としていますので、ご覧ください ☆
なお、今回に限らず、 ［備前虫明焼］ と、 「虫明焼の年表」 の年月が一致していないところは、
池上千代鶴の [虫明焼の記録] の、年月を採用したことによります。
森香洲の歴史は、虫明焼の歴史だと言っても、決して過言では有りません。
廃窯、復興を何度も繰り返しながらも、真葛香山が指導した虫明焼が、今なお続いているのは、
森香洲が虫明焼のために、すべての力を出しきったからです。
森香洲は、卓越した陶技を発揮して多くの雅品を制作しました。
しかし、販売はうまくいかず、決して裕福な生活だったとは、言えませんが、
充実した幸せな一生を送った。 と、私は思っています。
なお、瀬戸内市中央公民館の 「太田コレクション」 には、森香洲作品が２１点あるようです。
写真は ［邑久町史・文化財編］ に載っていますが、良い季節ですので公民館へ出かけてみて下さい。
と 言うことで、次回は１７２ページの 「明治期の陶工」 から読んでいきます。
〔追記〕
「森香洲は、明治２６年に倉敷の酒津焼に行った」 と、お話いたしました。
このことは、山陽新聞社刊・ [倉敷のやきもの] １３５ページの年表にも、
「一八九三 明治二六 渡辺祐吉、森香洲に嘱して兜山山麓に貿易窯を築く(明治二八年まで)」
と、記されています。
[倉敷のやきもの] には、写真が多く載っていますが、森香洲作と明記されたものは有りません ☆
そうですね・・・
胴に大きく 「酒津」 と書いている、６２ページの 「灰釉大徳利」 は、森香洲作かもしれません ☆
〔第６４回〕 ２０１５.１０．１３
こんにちは、お元気ですか ☆
私の好きな花・コスモスの季節なのですが、ここ３～４年でしょうか、
ピンク色のコスモスが、オレンジ色のコスモス（？）に浸食されています。
川沿いに咲いていた ピンク色のコスモスが、だんだん少なくなっていくのは寂しいですね。
今回は、 ［備前虫明焼］を再び読む・第十一話 です。
『・・・・・』内は、［備前虫明焼］・桂又三郎著からの抜粋。
［備前虫明焼］１７２ページの、 「明治期の陶工」 からですが、７人しか書かれていません。
岡山県勧業課の明治１３年発行の年報によると、虫明窯の職工数は、１３人です。
このことは以前・〔第２６回〕、〔第２７回〕などでも、お話いたしました。
明治年間には、もっと多くの陶工（陶芸家・作家）が、虫明焼に関与していたと思われます。
［備前虫明焼］ の原稿の締め切りが迫っていたのでしょうか、尻切れトンボになったようです ☆
それでも、読んでいきます。１７２ページの「横山喜代次」
『元治元年虫明で生まれた。号は香浦、晩年は香春を多く用いた。なお香浦の香は真葛香山の一
字をもらい名付けた。二十歳前後のとき森香洲に弟子入りして陶法を学び、明治十九年秋香洲が
横浜に移ったとき、喜代次もこれに同道して横浜に移り、真葛香山の工房で約八年間製陶に従事
した。また明治二十六年、森香洲が約一ヵ年ほど備中酒津の窯に行ったが、喜代次も香洲とともに
酒津窯へ行った。そしてまた大正二年にもう一度酒津へ行っている。大正七年虫明に備前焼陶器
株式会社が創立されたので、九、十月ごろ虫明に行く。そして大正九年十月ごろ備前町に移り、晩
年まで備前焼の製作に従う。』
と、書いています。
〔第１７回〕などでも、話しましたが、横山喜代次とは、
初代横山香寶（よこやまこうほう・１８６４～１９２８年）のことです。
「号は香浦、晩年は香春を多く用いた。」と、書いていますが、
桂又三郎は、「香浦」、あるいは「香春」銘（印）のある作品を見られたのでしょうか（？）
私・蓼純は、「香浦」、「香春」銘（印）のある作品を、一度も見たことがありません ☆
二代横山香寶の弟子である黒井一楽（くろいいちらく）は、横山喜代次も「香寶」を名乗っていた。
と、言っています。
横山喜代次は「香浦」、「香春」とも名乗っていたのかもしれませんが、
作品の銘（印）としては、「香寶」銘（印）のみを使っていた。 と思います。
また、「香浦の香は真葛香山の一字をもらい名付けた。」 と、書いていますが、
♪ まさかそれは 嘘でしょう （りりィ）
真葛香山が虫明に来たのは、明治初年（１８６８～１８７０年）です。
横山喜代次は、元治元年（１８６４年）に虫明で生まれています。
真葛香山が虫明滞在中は、横山喜代次は５歳前後ですので、無理があります ☆
桂又三郎も書いているように、森香洲に弟子入りして、陶法を学んだ のですから、師は森香洲です。
横山喜代次も、横山喜八も、同じ 「香寶 」印を捺していたのなら、銘（印）からは、
初代横山香寶（喜代次）作か、二代横山香寶（喜八）作かの判別は、できません。
できませんが、印の捺し方が違うということは、〔第２６回〕、〔第２７回〕などでも、お話いたしました。
それに、初代横山香寶が名工だったと言うことは、口伝えに私も聞いています。
銘（印）は同じでも、作品の出来は、それぞれ違います ☆
初代横山香寶作品だ、と私・蓼純が思っているものは、何点かもっています。
ただ、初代横山香寶は、「むしあけ」印だけのもの、あるいは全く印の無いものが多いです。
「蓼純Collection」 のページに、初代横山香寶作品を載せます。
なにが、いいかなー ・・・
「香寶」印 の無いものを、初代横山香寶作として載せるのもどうかと思い、
「むしあけ」印 と、「香寶」印 が捺された、水指を「蓼純Collection」のページにUPします。
以前にもお見せしたことがありますが、いい水指なので、ご覧になってください ☆
そうですね、ついでに水指の下に、土瓶（水注）の写真も載せておきます。
この水注も 「むしあけ」印 と、 「香寶」印 を捺しています。
初代横山香寶作ということで、間違いないと思います。
瀬戸内市中央公民館の太田コレクションには、横山香寶作の菓子器が展示されていますが、
太田コレクションの落雁（らくがん）図の菓子器は、二代横山香寶作です。
初代横山香寶の作品は、展示されていません。
と言うことで、173ページ。「久本葛尾」に進みます。
『弘化三年裳掛村福谷に生まれ、二十三歳のとき虫明間口窯で真葛宮川香山に師事して陶法を
学ぶ。明治十年岡山市天瀬の陶器製造所へ移り、同十三年伊部陶器会社創立のとき指導者とし
て伊部に赴く。尓来伊部で備前焼の製作に従い大正七年七月歿。なお明治大正期の伊部では
ロクロの第一人者で、多くの傑作を世に遺している。』
と、書いています。
久本葛尾（ひさもとくずお・１８４６～１９１８年）についても、 〔第１２回〕 などで お話いたしました。
久本葛尾が備前で焼いた作品は、よく見かけます。
備前では、「葛尾」印 と、 「備前陶森」 などの備前印を、捺しています。
それでは、虫明では、どうでしょうか (？)
久本葛尾は、１０数年間虫明で制作したのですが、
「葛尾」印を捺した虫明焼作品を、私・蓼純は見たことがありません。
久本葛尾の虫明焼作品は、すべて無印あるいは、「むしあけ」印のみだ。 と思っています。
「むしあけ」印と、「葛尾」印を捺したものを、見たことがあると言う方がいらっしゃいましたら、
ご教示、ご指摘ください ☆
「明治十三年伊部陶器会社創立のとき指導者として伊部に赴く。」 と、書いています。
１７４ページ第１３３図に、久本葛尾作 備前焼水注の写真が載っています。
今までの備前焼では考えられない、洗練されたデザインです ☆
私・蓼純も、同じ形の水注をもっていますので、下に写真を貼っておきます。
<写真は、久本葛尾作 備前焼水注 葛尾印のみ>
次は、１７４ページの 「田中巴石」 なのですが、今回はこれで終わって、
次回は、 「田中巴石」 から読んでいきます。
〔第６５回〕 ２０１６.０２．１２
こんにちは、蓼純（たでじゅん）です。
どうも、更新が遅れてしまいます。月日が経つのは速いですね ☆
今回は、 ［備前虫明焼］を再び読む・第十二話 です。
『・・・・・』内は、［備前虫明焼］・桂又三郎著からの抜粋。
それでは、［備前虫明焼］１７４ページの 「田中巴石」 から読んでいきます。
『安政二年生れ、名は庄四郎、号は陶庵とも巴石ともいった。明治初年虫明窯で作陶していたが、
同十年岡山市の陶器製造所へ移り三、四年製陶に従事した。それより播州赤穂で磁器を焼く。
岡山県三石町に三石耐火煉瓦会社が創立されたので、同会社に移る。のち会社が解散したので、
明治三十一年より岡山市高砂町正覚寺境内に築窯して約十ヵ年作陶に従事した。
それより後楽園に移り御庭窯を復興して、主として楽焼の茶器を焼いた。』
と、書いています。
田中巴石（たなかはせき・１８５５～１９１９年）の虫明焼作品は、
瀬戸内市中央公民館の太田巌コレクションには、ありません。
私・蓼純も、もつていません。 ☆
「巴石」印を捺した、後楽園焼の香合は、もっているのですが、
写真をＵＰして、見ていただく程の品でもないです ☆
田中巴石は、以前〔第１２回〕などで、比較的詳しくお話ししていますので、今回はスルーします。
次は、［備前虫明焼］同じく１７４ページ、 「梶原好美」 を読みます。
『備前虫明の工人であった。明治十四年頃から常滑に移り、主として真焼物の茶器を作った。
大正十一年八月歿した。』
と、書いています。
梶原好美は、作品の写真もありませんし、虫明焼に従事していたと言うことしか判っていません。
虫明にも、梶原と言う姓がありますが、地元の人ではなくて、播磨の出身の人のようです ☆
次は、［備前虫明焼］１７５ページ、 「山根四山」 です。
『名を政一郎といい、島根県江津市（石見国）の出身で、明治年間虫明で製陶に従事した。
（１７９頁参照）』
と、書いています。
なお、（１７９頁参照）は、（１９０頁参照）の誤りだと思います。
石見（いわみ）地方は、江戸時代から、大甕などの焼きものの産地であり、
現在も皿、湯呑み（カップ）などを作っています。
また瓦の町としても、有名な地です。石州瓦（せきしゅうがわら）です。
山根四山（やまねしざん）も、焼きものの町で生まれ、育ったのですね ☆
作品の写真は、１７５ページの第１３４図に発掘品の鉢が載っています。
写真がモノクロですし、鮮明でないのでよく判りませんが、釉薬は掛けているのでしょうか、
出身地、氏名などを鉄釉で書いているようです。
瀬戸内市中央公民館の、太田コレクションにも一点あります。
ですから、 ［邑久町史・文化財編］ に載っています。
１７９ページ、３９.びわ鉢です。これも、出身地、氏名などを入れています。
いま写真を見ると、以前に枇杷（びわ）らしくない絵だ、と言った事があるのを思い出しました ☆
「太田コレクションに学ぶ」 で、お話していました。
えーと、 〔第４３回〕 ですね。比較的詳しくお話しています ☆
出身地、氏名を入れていますので、今となっては陶工（陶芸家・作家）が判明できていいですね。
虫明焼は、銘（印）を入れていないものが多くて、私が集めているものの中でも、
虫明焼ではあるが、誰が造ったのか（？） と言うものがよくあります。
現在の虫明焼作家の方は、どなたも銘（印）を入れています ☆
次は、同じく１７５ページの、「昇山」です。
『姓不明、明治年間虫明焼の製陶に従事した。（１８０頁参照）』
これも、（１８０頁参照）は、（１９１頁参照）の誤りです。
１９１頁を参照すると、 『明治２５年虫明窯で製陶に従事した。』 と書かれています。
「昇山」銘（印）については、以前に、
「昇山」ではなく、「晟山（三代清風与平）」ではないのか（？） と、メールを頂いたことが有ります。
１９１ページを参照すると、作品の写真はありませんが、「曻山」の銘（印）が載っていますので、
「昇山」で間違いないようですが、この陶工（陶芸家・作家）についても、何もわかりません ☆
次も１７５ページの、「川崎玉峯」です。
『名は喜平、明治年間虫明焼の製陶に従事。（１８０頁参照）』
（１８０頁参照）は、（１９１頁参照）の誤りです。
そして、「川崎玉峯」は「河崎玉峯」の誤りです。
１９１頁を参照すると、玉峯の銘（印）が載っています。
玉峯の作品も、瀬戸内市中央公民館の太田コレクションにありました。
［邑久町史・文化財編］ １６９ページ、１２.緑釉茶碗です。
名工とは、言い難いかもしれません ☆
高台内に、「玉峯」印が捺されているそうです。
これで、「明治期の陶工」は、終わりですね。
桂又三郎にしては、ずいぶんと粗雑な纏め方になっています ☆
キリが良い所ですので、すこし短いですが、今回はこれで終わります。
次回は１７６ページ第五期・昭和窯から読んでいきます。
昭和窯も、四人しか載っていませんが、時が経つと、昭和、平成時代の陶工（陶芸家・作家）も、
判らなくなってしまいますので、私・蓼純が知っている作家については、お話する予定です ☆
〔第６６回〕 ２０１６.０３．２０
♪ カニ 見に 行こう !!
いきなりですが、真葛香山（まくずこうざん・宮川香山）が、この世を去ったのが、
１００年前・大正５年（１９１６年） ５月２０日です。
真葛香山（宮川香山）没後１００年展 が、横浜、東京、大阪などで開催されています。
真葛香山・横浜焼のコレクターとして有名なのが、
田邊哲人（たなべてつんど）、吉兆庵美術館（吉兆庵）、それと眞葛ミュージアム（眞葛M）です。
田邊哲人コレクションを中心に展示したのが、サントリー美術館の
没後１００年 宮川香山 欧米を感嘆させた、明治陶芸の名手（ファンタジスタ）
「名手」に、「ファンタジスタ」と、ルビを振っています。
名手（めいしゅ）では、ダメだったのでしょうか ☆
吉兆庵コレクションを中心に展示したのが、日本橋三越本店の
-世界を驚かせた焼物- 吉兆庵美術館蒐集 真葛香山展
横浜の眞葛Mは、
初代宮川香山 没後１００年ベストコレクション展
「やはり、都会に住んでいないとダメだ！」 と、言うのが通常ですが、今回は違います ☆
岡山では、吉兆庵と、岡山県立美術館（県美）で開催されています。
岡山での真葛香山展は、吉兆庵の
これぞ超人技！ 横浜真葛（まくず）焼
「真葛」 に、「まくず」 と、ルビを振っています。
サントリー美術館のファンタジスタとは違って、このルビは必要ですよね ☆
焼きものに、あまり興味が無い人は読めませんからね。
真葛香山（宮川香山）も、一般には意外と知名度が低いです ☆
日時 ２０１６年３月１２日（土曜）～６月５日（日曜）
場所 岡山・吉兆庵美術館 岡山市北区幸町７－２８
吉兆庵館蔵の、大正時代の初めにつくられた、渡り蟹水盤などが展示されています。
真葛香山の横浜焼は、輸出用の大きなものが多いのですが、
吉兆庵の蒐集品は、置物、菓子器、香合、香炉、水指など国内向けものが多いようです。
県美の展覧会は、
世界を魅了した陶芸家 没後１００年 宮川香山 虫明焼と明治の陶芸
私は、 「宮川香山」 と表記するより 「真葛香山」 と表記した方が、判りやすいと思いますが、
ほかの美術館（博物館）でも、「宮川香山」としている所が多いですね。
「香山」 も知らない人には読みにくいので、Miyagawa Kozanとローマ字を入れています。
県美展示の、渡り蟹水盤は、東京国立博物館蔵の重要文化財です。
真葛香山・横浜焼の展示品は、県美では 眞葛M の館蔵品を中心に展示しています。
真葛香山作などの、虫明焼の展示も充実しています ☆
県美のホームページ（ＨＰ）を、ここに転載させていただきます。
＜以下、県美のＨＰから転載＞
宮川香山（本名：虎之助1842-1916）は九代茶碗屋長兵衛［初代楽長造（らくちょうぞう）］の
四男として京都真葛原に生まれました。父の跡を継いだ虎之助は、一時、岡山で虫明焼の指導にも
あたっており、今日、虫明焼が全国区で知られるようになったのは香山の功績と言えるでしょう。
その後、香山は、薩摩の御用商人梅田半之助らの求めに応じ、明治3年横浜へ移住、翌年横浜太田村
字富士山下に眞葛窯を開窯し、職人たちとともに輸出用陶磁器を製造しました。
香山はフィラデルフィア万博、内国勧業博覧会等、国内外の博覧会に出品し輝かしい成績を収め、
その名は世界にとどろきました。明治初年、一斉を風靡した薩摩焼風の錦手（にしきで）を制作する
ことから始まり、技巧を凝らした細密で彫刻的な手法を用いた高浮彫（たかうきぼり）作品、さらに
明治20年代以降は、ヨーロッパの趣向の変化に応じ、釉下彩磁（ゆうかさいじ）や結晶釉など釉薬の
研究を進め、新機軸の作品を次々に発表しました。明治29年には帝室技芸員に選ばれ、明治を代表する
陶芸家として活躍しました。
本展は、没後100年を記念して、虫明焼の発展に寄与した香山を顕彰するとともに、日本の近代窯業界の
寵児として海外で高い評価を受けた香山を同時代の作品群とともに紹介します。草創期から現代までの
虫明焼作品、薩摩焼に影響を受けた明治期の各地の焼物、重要文化財2点を含む高浮彫作品から釉薬物まで
多彩で魅力溢れる香山の作品など、合わせて約250点の作品を一堂に展覧します。
＜以上、県美のＨＰから転載＞
県美のＨＰには、 「香山の作品など、合わせて約２５０点の作品を一堂に展覧します。」
と、書いていますが、さらに増えて３００点くらいの展示になったようです。
余りにも多すぎて、観覧するのが大変です ☆
講演会、フロアレクチャーなどもあるようです。
吉兆庵は、岡山駅からすぐの所ですし、県美も岡山駅から比較的近い所です。
近県の方も、ぜひお越しください。
今回は、 「蓼純Ｃｏｌｌｅｃｔｉｏｎ」 のページに、横浜焼とは全く違う・きらびやかでは無い、
真葛香山の虫明焼水指を載せましたので、ご覧ください ☆
［備前虫明焼］ を再び読む・第十三話の予定でしたが、休止いたしました。
次回も、真葛香山（宮川香山）展の、お話をしたいと思います ☆
〔追記〕
♪ カニ 見に 行こう !!
県美の真葛香山（宮川香山）展は、５月８日（日曜）まで開催ですが、
東博蔵（重文）の「渡り蟹水盤」の展示は、４月１７日（日曜）迄です。
遅くに行って、カニがいない と、がっかりしないでくださいね ☆
なお、本展覧会の図録・［宮川香山］が出ています。
没後 一〇〇年 宮川香山 虫明焼と明治の陶芸 岡山県立美術館発行
虫明焼ファンには、必見の資料です。
〔第６７回〕 ２０１６.０５．０９
岡山県立美術館（県美）の 宮川香山(真葛香山)展 も、昨日 終了しました。
何度か、県美に足を運ばれましたか （？）
どの作品も、どの作品も、素晴らしかったですね ☆
真葛香山・横浜焼は、超絶技巧と言われているだけあって、少し濃すぎましたか ☆
時代です。 刺繍、七宝焼、あるいは金工なども全部超絶技巧の時代でした。
真葛香山・横浜焼で、私・蓼純が一番好きな作品は、もちろん 渡り蟹水盤 です ☆
今回の県美の宮川香山(真葛香山)展は、ご案内のとおり図録が出ています。
［図録・宮川香山］ １３頁１９９図の、褐釉蟹貼付台付（渡り蟹水盤）です。
この渡り蟹水盤は、第２回内国勧業博覧会の出品作品です。
第２回内国勧業博覧会は、明治１４年（１８８１年）３月から開催されましたので、
この渡り蟹水盤の制作年は、明治１３年（１８８０年）の制作だ 、と断定してよいと思います。
重用文化財（重文） 褐釉蟹貼付台付鉢 東京国立博物館（東博）蔵です。
重文になったのは、なんと、平成１４年（２００２年）６月です。
時代が蟹に追いつくまでに、１２０年以上もかかったんですね ☆
この渡り蟹水盤は、勢いと迫力があります。
水盤の正円を嫌って、無造作に力強く抑えています。
水盤の足も、力強いです。釉薬（ゆうやく）を掛けずに、大胆なヘラ目と土味を残しています。
まさに蟹が水からでた瞬間の、流れ落ちる水を 流し釉で的確に表現しています。
蟹の甲羅、爪、足の形、文様までリアルに造っており、今にも、蟹が動き出しそうです ☆
皆様 ご存知のように、この東博の渡り蟹水盤と、同じ形の作品が二点あります。
吉兆庵美術館と、田邊哲人コレクションの渡り蟹水盤です。
私・蓼純も、吉兆庵美術館、田邊哲人コレクションの渡り蟹水盤は、どちらも見ています。
これらの二点の作品は、大正３年（１９１４年）頃に、重文の渡り蟹水盤を再現したものです。
レプリカだ ! と言ったら叱られそうですが、明治１３年（１８８０年）制作の重文・渡り蟹水盤を、
あまりにも忠実に写しています。
重文・渡り蟹水盤で、無造作に抑えてできた歪みも、そっくりそのままに再現していますし、
流れた水を表現した釉薬のタレも、正確に再現しています。
あまりにも、忠実に写し過ぎたため、迫力に欠けています。
優等生と言うか、無難に キレイにまとまり過ぎて、面白味がありません。
当然のことながら、大正３年頃に制作の渡り蟹水盤のほうがいい、 という方もいらっしゃいます。
大正３年頃に制作の渡り蟹水盤は、蟹を釉下彩にしていますし、真葛香山 最晩年の作品です。
私・蓼純は、明治１３年（１８８０年）制作の、重文・渡り蟹水盤が好きだ、 というだけです ☆
私は体力がないので、順路通りに渡り蟹水盤と虫明焼を本気で見て、薩摩焼を見たころには、
疲れてしまい、真葛香山・横浜焼は、ざっとしか見ていませんが、もう一点お話いたします。
［図録・宮川香山］ １０１頁１９５図の、 鳩桜花図高浮彫花瓶 （東京国立近代美術館蔵）です。
この花瓶は、ほかの真葛作品と比べて突出した出来だ、 と言うわけではありませんが、
「鳩櫻花図高浮彫花瓶」 は、日本の美を輸出しています。
高浮き彫りも後期になるほど、西洋人の好みに合わせた（迎合した）ものとなっていきます。
この 「鳩桜花図高浮彫花瓶」 が、岡山に来たのは、二度目です。
倉敷市立美術館に、平成１８年９月１５日から１０月２９日まで展示されたことがあります。
「やきものの美 東京国立近代美術館工芸館名品展」 です。
私・蓼純が、真葛香山の高浮彫作品を初めて見たのは、倉敷市立美術館での展示です。
〔第１３回〕 でも、お話いたしました。
あれから、１０年経ったんですね。なんだか懐かしいです ☆
鳩桜花図高浮彫花瓶に限ったことではないのですが、花瓶と言うより飾り瓶ですね。
假屋崎省吾(かりやざきしょうご・１９５８～) をもってしても、花を活けられそうにありません ☆
県美の 宮川香山(真葛香山)展 は、終わりましたが、香山作品を まだまだ見たい方は、
岡山・吉兆庵美術館 では、６月５日(日曜)まで 開催されています。
大阪市立東洋陶磁美術館 では、７月３１日(日曜)まで 開催されています。
横浜の眞葛ミュージアム に行かれたら、県美に展示しなかった作品も、見ることができます。
次回は、真葛香山・横浜焼以外の展示品について、お話したいと思います。
〔追記〕
岡山県立美術館の 宮川香山(真葛香山)展 は、終了しましたが、
岡山市立オリエント美術館では、
「日本工芸の１００年 ペルシアの記憶から現代まで」
特別展 東京国立近代美術館工芸館名品展
日時 ２０１６年４月２９日（金曜）～６月１９日（日曜）
が開かれていますので、出かけてみてください。
私・蓼純も行ったのですが、 ここでまた、 「鳩桜花図高浮彫花瓶」 を見る事が出来ました。
再々会（？） まさに、運命的な出会いです ☆
〔第６８回〕 ２０１６.０８．１７
残暑厳しき折ですが、お元気でお過ごしでしょうか ☆
私も元気に、ＲＩＯオリンピックを、ＴＶの前で応援しています ☆
前回は、岡山県立美術館（県美）の宮川香山(真葛香山)展から、
真葛香山・横浜焼の渡り蟹水盤と、鳩桜花図高浮彫花瓶の、お話をいたしました。
すぐに更新しょうと思っていたのですが、３か月以上経ってしまいました ☆
県美の展覧会では、真葛香山・横浜焼以外にも、多くの作品が展示されました。
貴殿が気になっていた、見たかった作品が、全て（？）展示されていたことと思います。
［図録・宮川香山］ を見ながら、お話いたしますので、 宮川香山(真葛香山)展 を、
もう一度、想い出して楽しんでください ☆
［図録・宮川香山］ １０頁６０図、６１図に染付手付樽が載っています。
左・６０図が、岡山県指定重要文化財の染付手付樽（楠渓下絵）です。
この染付手付樽に書かれた 「大日本真葛造」 と、「午初春於虫明」 から、真葛香山は、
少なくとも明治３年（１８７０年・午）の初春までは、虫明に居た、と言われていました。
右・６１図の染付手付樽は、山本博士コレクションと記されているとおり、
眞葛博士（山本博士）が英国で発見された、染付手付樽（英国染付樽）です。
この英国染付樽には、 「大日本真葛造」 と、 「庚午之桐月」 と書かれています。
英国染付樽の発見により、真葛香山は、明治３年（１８７０年・庚午）の七月（桐月）まで、
虫明に居たのではないか、と推定できる貴重な作品です。
［図録・宮川香山］２３頁～２５頁には、初代清風与平の作品が載っています。
陶器は、２５頁１５図の菊絵菓子鉢だけですね。
瀬戸内市教育委員会、と記されています。
太田巌コレクションです。
瀬戸内市中央公民館で、何度かご覧になられたことと思います。
この菓子器以外は、磁器です。
初代清風与平が虫明に来たのは、弘化４年（１８４７年）です。
１７０年前に虫明で造った磁器にしては、ずいぶんと白い色だな と思ったのですが、
私・蓼純の目が悪いので、真っ白に見えたようです ☆
どのくらい私の目が悪いかと言うと、真葛香山・横浜焼のフロアで、
白磁に青釉で描かれた花菖蒲にドキッとして、近づいてよく見ると、それは白磁ではなく、
黄釉地に花菖蒲が描かれたもので、がっかりしました ☆
１２８頁２４４図の釉下彩黄釉花菖蒲大花瓶のことです。
私が見間違えたから言うわけでは無いのですが、これは白磁のほうが良かったですね ☆
蛇足と言う類いです。
黄釉地が、当時流行っていたことは私も知っています。
清風与平、永楽善五郎などの名工も、黄釉地の作品を多く造っています。
しかし、黄釉地は、日本の美ではないですね。
［図録・宮川香山］ ２６頁２０図が、東京国立博物館（東博）蔵の銹絵雪笹文手鉢です。
手鉢の下部に、鉄釉（銹絵）で「虫明」と書いて、長方形で囲んでいます。
作者の銘（印）は、ありません。
銹絵雪笹文手鉢は、尾形乾山の本歌に倣った、仁阿弥道八の代表作と言われています。
この虫明銘の入った・銹絵雪笹文手鉢の存在により、仁阿弥道八の虫明来窯説がありますが、
「虫明焼の栞」 ・〔第５３回〕、 〔第５５回〕 などで、道八の虫明来窯説は否定いたしました。
それでは、仁阿弥道八が虫明に来ていないのなら、だれの作なのだ （？）
と、言われると思いますが、 それは・・・ 判りません ☆
今後も判明しないと思いますので、大雑把で無責任な推測をしますと、
この手鉢は、高橋道八と師弟関係にあった・初代清風与平作ではないか、 と思っています。
清風与平は弘化４年（１８４７年）に虫明へ来ていますし、作風も清風で間違いないと思います。
この銹絵雪笹文手鉢と同じような、足の付け方をしていた清風与平の菓子鉢を、
本で見た気がするのですが・・・
すこし調べてみましたが、どの本だったか、すっかり忘れて判りません。
目も記憶力も、悪くなる一方です ☆
［図録・宮川香山］ ３２頁３５図が、少林寺蔵の丹兵水指（箪瓢水指）です。
「伊木家の菩提寺である少林寺に眞葛作として伝来する水指。
大胆な釉の掛け分けや底部の鋭い削りが見どころ。」
と、記されています。
［図録・宮川香山］ ３３頁３６図が、瓢形茶入（東博蔵）です。
真葛香山が、よく用いる瓢箪形にして、正面に思いっきり釉を垂らしています。
この瓢形茶入と、先の少林寺の丹兵水指（箪瓢水指）を、真葛香山の虫明滞在中の作品として、
桂又三郎、池上千代鶴が、それぞれの著書で解説しているのは、ご案内の通りです。
［図録・宮川香山］ ４５頁６８図が、染付蔦花文水指（東博蔵）です。
これは、真葛長造（まくずちょうぞう）作です。
流石に、いい水指ですね。
他の作品も見ていきたいところですが、個人蔵となっています。
それに、私・蓼純も、納得できないものも有りますので、
ヘタに感想を述べると、誤解を招きそうなので 止めておきます ☆
今回の県美での宮川香山(真葛香山)展では、虫明焼は便乗展示（？）ですが、
過去にこれだけの虫明焼が展示されたことは、有りませんし、今後も無いだろうと思います。
虫明焼の貴重で希少な資料として、 ［図録・宮川香山］ は、ぜひ保存してください。
蓼純（たでじゅん）Ｃｏｌｌｅｃｔｉｏｎの頁には、清風与平の虫明焼蓋物（菓子器）を載せましたので、
ご覧になって下さい。
一見すると磁器風ですが、土（胎土）は半磁器（半陶半磁）という感じです。
紫陽花を染め付けた・良い菓子器なのですが、ＨＰの更新が遅れたため、
季節違いになってしまいました ☆
それでは、今回で宮川香山(真葛香山)展関連のお話は 終わります ☆
上に ［図録・宮川香山］ ２６頁２０図、東京国立博物館蔵の銹絵雪笹文手鉢と同じような、
足の付け方をしていた清風与平の菓子鉢を、本で見た気がするのですが・・・
すこし調べてみましたが、どの本だったか、すっかり忘れて判りません。
と、上に書きました。
［古虫明・現代虫明焼］ の６頁に載っている・清風与平作の葉形平鉢の足のつけ方と同じです。
忘れていましたが、思い出しましたので
〔追記〕 しておきます。 ☆
〔また追記〕
［図録・宮川香山］２６頁２０図、東京国立博物館蔵の作者不明の銹絵雪笹文手鉢は、
私・蓼純は、初代清風与平作ではないか、と思っています。
と、上に書きました。
この件については、期せずして岡山県立博物館（県博）と、ほぼ見方が一致しています。
県博発行の［図録・むしあげ］１ ２２頁、および１２３頁をご覧ください。
［図録・むしあげ］ の発行で銹絵雪笹文手鉢は、初代清風与平作の可能性が更に高くなりました ☆
〔第６９回〕 ２０１７.０６．２１
ご無沙汰しています ☆
今回は、 ［備前虫明焼］を再び読む・第十三話 です。
途中、真葛香山(まくずこうざん・宮川香山)没後１００年展についての お話をしましたが、
〔第６５回〕 ２０１６．０２．１２の続きとなります。
なんと、１年４か月以上前のことです ☆
それでも、［備前虫明焼］１７６ページの第五期・昭和窯「岡本英山」から読んでいきます ☆
『・・・・・』内は、［備前虫明焼］・桂又三郎著からの抜粋。
『明治十四年岡山県英田郡江見村に生れた。生家は、窯屋で瓶や擂鉢・丼などを焼いていた。
英山はそうした環境に育ったので、十六歳ぐらいからロクロの修行をしたという。』
『英山の作品はほとんど茶陶で、そのうちとくに茶盌・水指などに傑作が多い。ロクロが非常に達者で、
かつて正宗敦夫先生なども、これほどロクロのうまい陶工は、備前焼などにもないと大変褒めていた。
それに、人間的にも骨のある陶工で、決して名誉などを追及しない作陶一本の隠れた名工であった。』
明治１４年（１８８１年）岡山県英田郡で、代々窯業を営む家の二男・岡本運平として生まれました。
銘の 「英山」 は、故郷・英田の山に由来したのでしょう。
京都に５年滞在し技術を習得、後に出雲、九州の窯地を経て大正７年（１９１８年）に虫明に来ました。
備前陶器株式会社・虫明工場で、森香洲などと製陶の仕事をしていましたが、
大正１３年（１９２４年）虫明工場が閉鎖したため、浮田窯（岡山県津山市）に移ります。
昭和７年（１９３２年）４月に、再び虫明立場にきて 廃窯していた虫明焼を復興させました。
そして、昭和３７年（１９６２年）４月に亡くなるまで、虫明で陶業生活を行ないしました。
この地は、伊木三猿斎の窯と茶室のあった所で、前方には間口の内海が臨める景色の良い場所です。
今もこの場所で、松本 学（まつもと まなぶ）が作陶に勤しんでいます。
桂又三郎は、「英山の作品はほとんど茶陶で、・・・」 と書いていますが、そうとばかりも言えません。
火鉢、味噌・甘酒の瓶などの雑器も多く作っています。
［備前虫明焼］ １７６ページ１３５図の写真が、岡本英山です。
余談ですが、これは、私の父が撮った写真です。
父は岡本英山の窯場に、よく遊びに行っていました。
私・蓼純も、父に付いて何度か 行ったことがあります。
上半身裸で轆轤（ろくろ）を挽いていた、痩せた岡本英山のあばら骨（肋骨）が面白くて、
父が写真を撮りたいと言うと、上衣を羽織ってしまった ので残念だった と、言っていました。
なお、岡本英山については、 〔第１９回〕 、 〔第２０回〕 などでも お話しています。
英山作品の特徴の一つは、虫明焼の他の陶工（陶芸家・作家）は、手轆轤（ろくろ）を使っていたが、
岡本英山は、蹴轆轤（けろくろ）を使っていました。
右足で蹴っていたため、轆轤（ろくろ）が左回転しています。
岡本英山の作品は、瀬戸内市中央公民館にも、数点展示されています。
また、岡山県立美術館の宮川香山展にも、数点展示されましたので、 ［図録・宮川香山］ にも載っています。
次は、［備前虫明焼］１７８ページの「横山香宝」です。
『明治二年横山喜代次の弟として虫明で生れ、十五歳のとき森香洲の弟子となった。
昭和五年、土地の有志の協力を得て、虫明瀬溝へ築窯して独立したが、経営続かず
黒井一楽氏に窯を譲って、黒井山道入口へ窯を移した。』
これは、二代横山香寶（よこやまこうほう・１８６９～１９４２年）について書いています。
本名は、横山喜八で、初代横山香寶（横山喜代次）の弟です。
初代、二代共に横山香寶は、明治１６年（１８８３年）に森香洲に弟子入りして陶業を始めたのですが、
桂又三郎は、初代横山香寶を、［備前虫明焼］１７２ページで「明治期の陶工」として紹介し、
二代横山香寶は、同１７６ページに「昭和窯」の陶工として載せています ☆
なお、初代、二代横山香寶については、〔第１７回〕、〔第１８回〕 などでも、お話いたしました。
二代横山香寶の作品は、丁寧で虫明焼の伝統に忠実です。
少し真面目すぎて、意外性が無いと言うか、面白みに欠けるかもしれません ☆
二代横山香寶の作品も、瀬戸内市中央公民館・太田コレクションに 一点のみですが、
落雁（らくがん）の絵付けをした、菓子器が展示されています。
私・蓼純は、横山香寶の作品が好きなので、比較的たくさん集めています。
今回、ＵＰしょうかな と思ったのですが、また、機会があれば・・・
続いて、［備前虫明焼］、同じく１７８ページの「黒井一楽」に進みます。
『名は一男、大正三年生まれで横山香宝に陶技を学ぶ。昭和十年八月に初窯を出し、同二十六年
株式会社に組織を改め、社長に岡崎若松がなる。現在唯一の虫明焼窯元。』
〔第２１回〕などでも お話しましたが、一楽 は昭和８年（１９３３年）２月二代横山香寶に師事して陶業を始めました。
［備前虫明焼］は、昭和４１年（１９６６年）の発行ですので、 「現在唯一の虫明焼窯元」 と記されています。
岡本英山が、昭和３７年（１９６２年）に世を去ってからは、黒井一楽一人で虫明焼を続けてきました。
今・２０１７年６月現在では、数人の虫明焼陶工（陶芸家・作家）が活躍されています。
［備前虫明焼］ 昭和４１年（１９６６年）の発行後の黒井一楽について、もう少し説明しておきます。
昭和４１年（１９６６年）に黒井一楽の二男・黒井千左（くろいせんさ・黒井完治）を、
昭和５３年（１９７８年）には、長男の黒井慶雲（くろいけいうん）を、後継者として育成していきます。
なお、昭和５１年（１９７６年）に、脇窯（曙窯）を造っており、
その曙窯に、京都から 高橋一甫（たかはしいちほ・１９４８～） が来窯し、制作しています。
黒井一楽は、昭和５５年（１９８０年）に、岡山県重要無形文化財保持者に認定されました。
昭和６０年（１９８５年）には、労働大臣卓越技能者（現代の名工）として表彰されています。
また、昭和６３年（１９８８年）には、黒井一楽が会長となり虫明焼作陶会を設立しました。
作陶会は、黒井一楽が会長、森香泉（もりこうせん）を副会長として、黒井千左（くろいせんさ）、
黒井慶雲（くろいけいうん）、それに松本学（まつもとまなぶ）の五名が在籍しました。
一楽は、虫明焼を守り 発展させ、次代に引き継いだ偉大な陶工（陶芸家・作家）だったわけです。
その黒井一楽も、平成８年（１９９６年）２月に惜しまれながら、この世を去りました。
下世話な話ですが、茶陶・虫明焼が一番売れたのは、黒井一楽の時代だったと思います ☆
現在は、虫明焼だけではなく、焼きものが売れない時代になりました。
現在の陶工（陶芸家・作家）の中には、技を極めて良い作品を作ることより、
販売に 力のほとんどを、注いでいる方もいらっしゃいます。
黒井一楽と言えば、全作品が茶陶だ 、と思われるかもしれませんが、
ノベルティグッズと言うか、企業の周年記念の灰皿なんかも造っています。
私・蓼純も、黒井一楽作の水指、抹茶碗、花入れ等は勿論もっていますが、
茶陶では無い、希少な灰皿の写真をＵＰしてみます。
廻りを透かし彫りにして、内側に 「日興水島工場竣工記念」 と彫っています。
底部にも 「日興水島工場竣工記念」 と彫って、 「むしあけ」印 と 「一楽作」 の彫り銘があります。
希少な灰皿、と言ったのですが、「日興水島工場竣工記念」の灰皿ですので、
かなりの数を作ったのだろうと思います。
実は、私も三点もっています ☆
透かし彫りの模様はアバウトと言うか三者三様ですし、焼き具合（窯変）もそれぞれです。
「虫明焼」 「一楽作」 と記した共箱入りです。
<写真は黒井一楽作 日興水島工場竣工記念灰皿> 直径16.5cm、高さ5.0 cm
日本興油工業株式会社の水島工場竣工は、昭和３２年（１９５７年）ですから、
この灰皿も昭和３１年か、昭和３２年に一楽が作ったものだと思います。
いよいよ、「昭和窯の陶工」の最後の人です。［備前虫明焼］１７８ページの「久本勝次」。
『横山香宝や岡本英山の裏師であった久本の息子で、虫明焼をうまく製作していた。』
久本勝次（ひさもとかつじ）は、明治１０年（１８７７年）ごろの陶工（陶芸家・作家）です。
ですから、これは、久本謙一（ひさもとけんいち）の誤りだと思います。
「虫明焼をうまく製作していた。」 と書いています。
久本謙一は、森香洲に負けないくらいの轆轤（ろくろ）巧者であったと、伝え聞いたことがあります。
しかし、惜しくも戦死いたしました。
ただ、 「久本」 あるいは、 「謙一」 の銘（印）が入った作品は無いと思います。
蓼純（たでじゅん）Ｃｏｌｌｅｃｔｉｏｎのページに、久本謙一が作った抹茶碗ではないかと思われるものを、
載せておきます。
この抹茶碗は久本謙一作と確定できませんが、轆轤が上手いです。
それに、森香洲、横山香寶、岡本英山、黒井一楽作ではないと思います。
この抹茶碗が、本当に久本謙一作か？ という感じでご覧になってください ☆
［備前虫明焼］１７９ページからは、「銘款」が載っています。
興味のある方は、岡山県立図書館などでご覧になってください。
これで、［備前虫明焼］を、全部流し読みいたしました。
当然ながら、現在の作家は載っていませんので、
次回は私・蓼純が知っている虫明焼作家の名前だけでも、列記してみたいと思います。
今日が夏至です。これから益々暑さに向かいますが、皆様ご自愛ください ☆
〔第７０回〕 ２０１７.１１．０４
前回まで読んでいった、桂又三郎著・ ［備前虫明焼］ の発行前後頃に、虫明焼を始めた作家の、
名前だけでも、記録しておきたいと思います。
［備前虫明焼］ の発行前後頃に、虫明焼が変わったことは、何でしょうか（？）
虫明焼の陶工が、先生と呼ばれだしました ☆
陶工が先生と呼ばれるようになったのは小さな変化ですが、大きな変化は轆轤（ろくろ）です。
昔の手轆轤（てろくろ）は、ターンテーブルに付けた棒を、自分の手で引いて回転させていました。
岡本英山は、蹴轆轤（けろくろ）を使っていたので、足で蹴っていましたが、
要するに、電気の力ではなく、陶工（陶芸家・作家）自身が、轆轤を手とか足で回していました。
木で造った昔の轆轤が、揺れがなく定速で回転する筈がありません。
前後左右、上下に振れ、そして回転にムラがあるため、自然に作品に歪みが生じます。
自然に、偶然に出来てしまう揺らぎ、それが結果として、焼きものに優雅さ（美）を与えました。
工業国日本は、電気・機械製品の技術も、世界最高水準です。
世界最高の技術によって生まれた、シンポ工業の電動ロクロは素晴らしいものです。
しかし、静かに安定した速度で回転する電動ロクロを使えば、
速く、大量に 無難なものを作れますが、形が単調になり、まったく趣のない作品になります。
現代作家の作品に魅力を感じない、ときめかないのは、電動ロクロも要因の一つかもしれません。
作品に魅力を感じる事が出来ない他の原因は、
土（粘土）、窯、燃料（薪）、釉薬（ゆうやく）、絵付け、陶工（陶芸家・作家）の技術、真剣さ、・・・
と、言ったら全部になってしまいますね ☆
焼きものが売れないのは、買う側ではなく、造る側の問題が大きいようです。
話が脱線したというより、まったくレールに乗っていませんでした ☆
それでは、［備前虫明焼］に、掲載されていない虫明焼作家を記してみたいと思います。
先ずは、黒井千左（くろいせんさ・１９４５～）
昭和２０年(１９４５年)に、黒井一楽の二男として生まれた・黒井完治です。
<写真は黒井千左の大皿・直径51㎝>
昭和４２年(１９６７年)に、京都市工芸指導所を卒業したのち、
父・黒井一楽（くろいいちらく・１９１４～１９９６）に師事し、虫明焼の制作を始めています。
昭和６３年（１９８８年）３月、黒井一楽が会長だった虫明焼作陶会に在籍する。
平成３年(１９９１年)、日本工芸会正会員に認定されました。
平成２３年(２０１１年)には、岡山県重要文化財（県重文）に認定されています。
備前焼では、人間国宝、県重文になられた作家が多くいますが、
虫明焼では、過去にも人間国宝はいませんし、県重文も黒井一楽と黒井千左の二人だけです。
黒井千左は、伝統に則ったものだけではなく、新しい焼きものにも挑戦されています。
この挑戦が、二代黒井一楽ではなく、黒井千左であるということでしょうか（？）
銘（印）は、ひらがな「むしあけ」印と、「千左」の縦書き彫り銘です。
初期のものには、ひらがな「むしあけ」印と、「左」だけの彫り銘もあります。
私・蓼純も、「左」 銘だけの千左の抹茶碗をもっています。
［岡山陶芸図鑑］ が、昭和５６年（１９８１年）に岡山日日新聞社から発行されました。
作品のカラー写真と、陶印、陶歴などが掲載されています。
黒井千左は、［岡山陶芸図鑑］ の１１９ページに、抹茶碗が載っています。
また、［古虫明・現代虫明焼］ の４６ページには、火円文灰釉大皿が載っています。
順不同になりますが、黒井ファミリーを続けます。
黒井慶雲(くろいけいうん・１９４０～）
黒井一楽の長男(本名同じ)で、昭和１５年(１９４０年)に生まれています。
黒井慶雲は、黒井千左の実兄ですが、サラリーマンから転身のため、
虫明焼を始めたのは、黒井千左より遅いスタートです。
昭和５３年(１９７８年)、父・黒井一楽に師事し、作陶を始めています。
銘（印）は、ひらがな「むしあけ」印と、漢字「慶」または「慶雲」の彫り銘です。
［岡山陶芸図鑑］ の１１８ページに抹茶碗が載っており、
［古虫明・現代虫明焼］ の４５ページには、透彫手鉢の写真を載せています。
昭和６３年（１９８８年）３月、黒井一楽会長の虫明焼作陶会に在籍する。
黒井博史(くろいひろし・１９７４～)
黒井千左の長男(本名同じ)で、昭和４９年(１９７４年)生まれ。
平成１７年(２００５年)、京都府立陶工高等技術専門所卒業。
平成１８年(２００６年)、京都市産業技術研究所を卒業後、
父・黒井千左に師事し、虫明焼の作陶を始めています。
平成３０年(２０１８年)、日本工芸会正会員に認定される。
黒井博史も、サラリーマンから転身したため、虫明焼をはじめたのは遅いのですが、
祖父が黒井一楽、父が黒井千左、伯父が黒井慶雲と、恵まれた環境で育っています。
銘（印）は、ひらがな 「むしあけ」印 と、彫り銘（何と彫っているのか不明）です。
彫り銘はイニシャルの「Ｈ」と聞いたことがありますが、作品を見ても分かりません。
箱書きは楷書で 「博史」 と書いていますので、私・蓼純にも読めます ☆
以上が、黒井ファミリー現役の３人です。
焼きものが売れない時代ですが、黒井ファミリーは、作品の販売が上手です ☆
高橋一甫（たかはしいちほ・いっぽ １９４８～）
昭和２３年(１９４８年)生まれ。
昭和５１年（１９７６年）に、黒井一楽が築窯した脇窯（曙窯）へ京都から来て、
抹茶碗、花入れ（花瓶）などを曙窯で制作する。
銘（印）は、ひらがな「むしあけ」印、または漢字「虫明」印と、漢字「一甫」の彫り銘。
東原泥多（ひがしはらでいた）は、昭和９年(１９３４年)生まれ。
本名は、東原好輔（ひがしはらよしすけ）であるが、のちに東原義典と改名。
昭和４１年(１９６６年)に、虫明焼を始める。
東原泥多は、 ［岡山陶芸図鑑］ の２０２ページに鉄釉を掛けた抹茶碗が載っており、
「作品の一つ一つを、心を込めて作る。人間的なぬくもりのある作品づくりに心掛けたい。」
と、記されています。
銘（印）は、漢字 「泥夛」 印
藤本扇山（ふじもとせんざん）
栞をみると、「平成二年、私は古希を迎えるに当り作陶の道に入りました。
何分年取ってからの事で、作品は極めて稚拙ではございますが、
二十歳の若者に負けない気概と情熱をもって日夜励んでいます。」
と書かれています。
東原泥多に師事し、虫明焼の作陶を始めました。
古希を迎えるに当たり、と記されていますから、７０才位からスタートしたのですね。
７０歳で、若者に負けない気概と情熱があるとは、頭が下がります。
銘（印）は、 「扇山」 の彫り銘です。
<写真は藤本扇山の大皿・直径33.5㎝>
蓼純（たでじゅん）Ｃｏｌｌｅｃｔｉｏｎの頁に、藤本扇山作の抹茶碗をＵＰしました。
轆轤引きの後、手（掌）で押さえて撫四方(なでしほう)にしています。
絵付けは、四君子（梅、竹、蘭、菊）を 四面に描いています。
直径18.0㎝の大抹茶碗です。
菓子鉢の大きさですが、共箱に「虫明焼 茶碗」 と記していますので茶盌です ☆
森香泉（もりこうせん・１９３１～２０１１年）は、本名を森澄夫と言い、
昭和４７年(１９７２年)に、作陶を始めました。
［岡山陶芸図鑑］の２６０ページに、竹絵の抹茶碗を載せて、
「土味に重点を置き、虫明焼の伝統を守りながら勉強して行きたい。」
と、書いています。
<写真は森香泉の壺（花瓶）・直径22.5㎝>
絵付けは、上寺山 餘慶寺（うえてらさん よけいじ） の三重塔（？）
［古虫明・現代虫明焼］ には、４８ページに鉄釉水指が載っています。
森香泉は、虫明焼の普及、知名度向上にも力を注いでおり、
西大寺のふれあいセンターで、虫明焼の陶芸教室を開いていました。
私・蓼純も、西大寺のふれあいセンターで、森香泉の教えを受けた一人です ☆
森香泉は、私の叔父の知人ということもあり、初日からよく話をしていました。
虫明焼が好き、虫明焼を愛しているということが、言動から熱く伝わってきました。
昭和６３年（１９８８年）３月、黒井一楽会長の虫明焼作陶会に副会長として在籍する。
平成元年９月に、シンガポール日本芸術家交流展に作品を出品しています。
その出品作品が、シンガポール国立博物館に永久収蔵されています。
森香泉の銘（印）は、ひらがな「むしあけ」印と、「香泉」の彫り銘、
または、ひらがな「むしあけ」印と、漢字横書き「香泉」印。
米田佳泉（よねだけいせん）
本名は米田多佳子（よねだたかこ）
女流作陶家。
昭和６３年（１９８８年） 森香泉に師事して、虫明焼を始める。
佳泉の「佳」は本名に、「泉」は森香泉の「泉」に由来しています。
森香泉窯に約１０年間従事していたが、
平成１０年（１９９８年）に工房「佳泉」を 岡山市西大寺に開設。
佳泉の栞には、 「伝統ある虫明焼の正風を曲げることなく、土と炎に、釉薬と絵つけ、
そして造形に私なりの創意を試みてみたいものと頑張っております」 と記しています。
山崎春泉（やまさきしゅんせん）
森香泉に師事して、虫明焼を始めます。
春泉の「泉」は、森香泉の「泉」に由来しています。
女流作陶家です。
抹茶碗などの絵付けも、鉄釉（銹絵）ではなく、色の入った花などを描いたものが多いです。
銘（印）は、変形六角形の中にひらがな「むしあけ」印 あるいは漢字「虫明」印と、
六角形の中に「春泉」印です。
春泉の栞には、「古典の継承と新しいものへの模索。これは陶工の永遠の命題であろうと思います。
私もこの命題に向かって一歩一歩着実に歩みたいと思っています。」と記しています。
赤松香石（あかまつこうせき）
本名、赤松正雄
森香泉に師事して、虫明焼を始める。
銘（印）は、ひらがな「むしあげ」印と、「香石」印。
香石の「香」は、森香泉の「香」に由来。
妹尾栄泉（せのおえいせん）
本名、妹尾幸夫
吉井川沿いの岡山市西大寺川口に吉井曙窯を造る。
銘（印）は、ひらがな「むしあけ」印と、「栄泉」印。
栄泉の「泉」は、森香泉の「泉」に由来。
泥泉（でいせん）
師匠は、東原泥多か森香泉か（？） 不明。
干支の置物などを作る。
彫り銘。箱に「むしあげ」印。
松本繁雄（まつもとしげお）は、岡本英山と親交が深く、虫明焼の研究も、よくされていた方です。
［備前虫明焼］・桂又三郎著に載っている写真も、松本繁雄が写したものが多くあります。
私の父とも、虫明焼についてよく話をしていました。
昭和４２年（１９６７年）に、伊木三猿斎の茶室と虫明立場窯を復興させ、自らも作陶を始めました。
銘（印）は、ひらがな「むしあけ」印と、漢字縦書き「木公」印です。
また、「むしあけ」印を捺さず、「央明」 「明浦」 「琴浦」 の印もよく使用しています。
「木公」の由来は、松本の「松」の字を分解したものです。
<写真は橋本龍太郎自筆（徳不孤必有隣）の大皿・直径38.0㎝>
この大皿は、橋本龍太郎（後の総理大臣）が厚生大臣の就任記念に作ったものです。
松本学が轆轤引きし、橋本龍太郎が「徳不孤必有隣」と書いたものを、
松本繁雄が釉掛けして、虫明立場窯で焼いた。
松本学（まつもとまなぶ・１９５７～）は、松本繁雄の二男です。
昭和５４年（１９７９年）に、大阪芸術大学工芸学科陶芸専攻を卒業し、
父・松本繁雄が復興させた虫明立場窯で、虫明焼を始めました。
他の職業につかず、直ぐに虫明焼を始めたのは、松本学と黒井千左だけでしょうか（？）
私・蓼純も、松本学の工房には何度となく お邪魔して、虫明焼の話をよくしています ☆
［岡山陶芸図鑑］の２４１ページに、「虫明焼の伝統を守りながら、象嵌的な部門へも展開していきたい」
と、書いています。
［岡山陶芸図鑑］に、虫明練込八角皿が、
［古虫明・現代虫明焼］の４７ページには、間口の海を表現したのか、横幅７１ｃｍの大皿が載っています。
松本学の初期作品は、大学の先生の影響も有ってか、前衛的（死語？）な作品が多いようです。
昭和６３年（１９８８年）３月、黒井一楽会長の虫明焼作陶会に在籍する。
銘（印）は、ひらがな「むしあけ」印と、漢字「学」印です。
なお、箱書きは「虫」ではなく「蟲」を使い、「蟲明焼」と書いています。
また、古美術・工芸の月刊誌 ［目の眼］ 百号記念特別号に
「カメラ散歩 岡山・虫明・松本学さん 伊木三猿斉 お庭焼の由緒に薫る」
を、金田眞一が寄稿しています。
岡部紫山（おかべしざん・１９２３生）
銘（印）は、ひらがな「むしあけ」印と、漢字縦書き「紫山」印、
または、「紫山」、「紫」だけの彫り銘です。
栞に、「深い色合いと、素朴な絵付けに魅せられ作陶に励んでいます。」
と書いています。
岡部紫山は、長船（瀬戸内市長船町長船）で制作していますが、
「深い色合いと、素朴な絵付けに魅せられ・・・」 と言うだけあって、
古い虫明焼に最も近い作品を焼いています、虫明焼の正統派（？）です。
<写真は岡部紫山の大皿・直径45.5㎝>
今泉陶光（いまいずみとうこう）
銘（印）は、読めませんが彫り銘です ☆
瀬戸内市長船町長船で、薄造りの抹茶碗などを制作していました。
包瓶には、蓋の摘みを龍の形にしたものもあります。
父親は岡山県重要文化財の刀匠で、「備前刀復興の祖」と言われた
今泉俊光（いまいずみとしみつ・１８９８～１９９５）です。
井上永山（いのうええいざん）
銘（印）は、ひらがな「むしあけ」と、漢字「永山」の縦書き彫り銘、
あるいは、漢字「虫明」の横書き印（角印・右から左）と、漢字「永山」の縦書き彫り銘です。
岡本英山（おかもとえいざん）と区別するため、「ながやまえいざん」と呼ぶことが有る。
永山は英山を意識していたのか、包瓶の摘みが、英山のエビを真似たものがよくあります。
小野田耕夫（おのだすきお）
作品は、井上永山の窯で焼いている。
大賀香岳（おおがこうがく）
銘（印）は、ひらがな「むしあげ」印、または漢字「虫明」印と、漢字「香岳」印。
蛸壷、蝉の形の花入れ（花瓶）などの細工物も作っている。
宮川陽仙（みやがわようざん）
本名は宮川正徳。元中学校長から、作陶の道へ進む。
銘（印）は、ひらがな「むしあけ」印と、「陽仙」印。
岡山市西大寺に築窯。
小林忠広（こばやしただひろ）
飛田晋一（とびたしんいち）
銘（印）は、ひらがな「むしあげ」印と、「と」？の彫り銘。
共箱には、「晋」の角印。
圭二（けいじ）
銘（印）は、ひらがな「むしあけ」印と、フチ無し漢字「圭二」または「圭」印。
敬山（けいざん）
銘（印）は、ひらがな「むしあげ」印と、長方形の中に漢字「敬山」印。
香秀（こうしゅう）
銘（印）は、漢字「虫明」縦印と、漢字「香秀」印。
とりあえず、比較的新しい虫明焼作家の名前を挙げてみました。
私・蓼純も、参考にと思い、現代作家の作品も何点かは、もっています。
共箱で栞付きのものも有るのですが、名前、住所、電話番号くらいしか判りません。
もう少し、何か判りましたら、追記や、訂正をしたいと思っています。
蓼純（たでじゅん）Ｃｏｌｌｅｃｔｉｏｎのページには、藤本扇山の大抹茶碗を載せました。
よろしければ、ご覧ください。
〔第７１回〕 ２０１８.０１．０１
あけまして おめでとうございます。
本年もよろしく お願いいたします。
貴方様のご多幸と、世界平和を、心から願っています。
「今月の抹茶碗」のページでも紹介いたしましたが、
今年は、岡山県立博物館（県博）で、虫明焼展が開催されます ☆
平成２９年度 特別展 『むしあげ –岡山に花開いた京の焼物- 』
日時 ２０１８年１月１９日（金曜）～３月１１日（日曜） ９時３０分～１７時００分
場所 岡山県立博物館 岡山市北区後楽園１番５号
虫明焼が、美術館（博物館）で展示されることは、まずありませんでした。
しかし、２０１６年３月１８日から５月８日まで、岡山県立美術館（県美）で、
「世界を魅了した陶芸家 没後１００年 宮川香山 虫明焼と明治の陶芸」
が、開催されました。
県美の虫明焼展から２年足らずで、県博での展覧会が開かれるのは、なぜか（？）
それは、たまたま（偶々）です ☆
「虫明焼にとって、真葛と三猿斎を省いては、第一虫明焼そのものの意味がない。」
と、 ［備前虫明焼］ ７９ページに桂又三郎（かつらまたさぶろう） も書いています。
県美での虫明焼展は、真葛香山（宮川香山）没後１００年の２０１６年に開かれ、
県博での虫明焼展は、伊木三猿斎（いぎさんえんさい）、生誕２００年の２０１８年に開催。
と、言うわけです。
それに、〔第１回〕でも お話いたしましたように、２０１８年は虫明焼創窯２００年です ☆
県博のホームページ（ＨＰ）を、転載させていただきます。
むしあげ -岡山に花開いた京の焼物-
|
期 間 |
平成30年1月19日（金曜日）～3月11日（日曜日） |
虫明には、幕末から明治にかけて京都の陶工（清風与平、真葛香山）が
訪れ、優れた茶道具を制作しました。その背景には、裏千家１１代玄々斎と
伊木忠澄（三猿斎）の交流があったと言われます。「日本一清楚」とも評され
る虫明焼の魅力を紹介するとともに、当時の京都と岡山の交流を検証します。
むしあげ –岡山に花開いた京の焼物-
虫明焼に押している銘（印）は、「むしあげ」 よりも、 「むしあけ」印 の方が遥かに多いのですが、
「虫明」 の正式な読み方は、県博のＨＰに記載の通り 「むしあげ」 です。
見たことのない水指の写真が、載っています。
個人蔵となっています。今まで大切に伝えてくれたのですね。
もし、この水指の蓋がなくなっていたら、本体から三角錐の蓋の形は、とても想像できません ☆
曳舟水指と書いています。 曳舟？ 舟？ ・・・
あれっ、伊木三猿斎、生誕２００年展とも、虫明焼創窯２００年記念展とも、
記していないですね（？）
「日本一清楚」 とも評される虫明焼の魅力を・・・
と、記されています。
これは、美術史家・脇本楽之軒（わきもとらくしけん・１８８３～１９６３年）が、
「日本一清楚の陶器は備前の虫明である」 と言い切りました。
桂又三郎 「虫明焼にとって、真葛と三猿斎を省いては、第一虫明焼そのものの意味がない」
脇本楽之軒 「日本一清楚の陶器は備前の虫明である」
二人とも、少し言い過ぎたようです ☆
「岡山に花開いた京の焼物」展 ということなので、蓼純（たでじゅん）Ｃｏｌｌｅｃｔｉｏｎの頁に、
京都の名工・澤村東左（さわむらとうさ）の作品を、何点か載せました。
東左とは、三代清水六兵衛の弟子で、明治１０年（１８７７年）ころに、京都から虫明にきています。
東左も、京の焼物を虫明に伝えた一人です。
東左については、［備前虫明焼］１４６ページに、抹茶碗の写真と説明が載っていますし、
東左の印は、１８９ページに載っているとおり、五角形の中に「東左」と書いています。
蓼純Ｃｏｌｌｅｃｔｉｏｎの頁に、東左の重ね盃、水指、抹茶碗、向付けなどを載せましたので、
ご覧いただければと思います。
この下には、真葛の三つ重ね盃を、載せておきます。
真葛の大中小の、染付け三つ重ね盃です。
大きさは、直径が大１２．２㎝、中１１．２㎝、小９．８㎝くらいです。
庚午（かのえうま・明治３年）、於明浦（虫明）、菊渓幽人（きっけいゆうじん） と書いています。
高台内に、「大日本真葛造」 と入れています。
と言うことで、今回は終わります。
寒い季節ですが、少し暖かい日に県博の、
「むしあげ –岡山に花開いた京の焼物- 展」 に是非お出かけください。
１月２０日（土曜日）が「大寒」です。それにしても、寒い季節の開催ですね ☆
〔追記〕
むしあげ –岡山に花開いた京の焼物- 展の、図録が出ました。
展来会に行かれた時に、ぜひ購入してください ☆
写真、解説とも、盛りだくさんです。
しかも、図録ですので安価です ☆
〔第７２回〕 ２０１８.０４．０８
ことしは、桜の開花が早かったため、後楽園の桜も今日くらいで終わりです。
後楽園のとなり・岡山県立博物館（県博）で開催された、
平成２９年度 特別展 『むしあげ –岡山に花開いた京の焼物- 』
も終わりましたが、ご覧になられましたか（？）
清風与平（せいふうよへい）、真葛香山（まくずこうざん）作品が、多数展示されていました。
私・蓼純は、記念講演も聴かせていただきました。
記念講演があった１月２０日（土曜日）が、大寒であるにもかかわらず、
朝起きてみると、無風で暖かい日でしたので、出かけてみました ☆
記念講演は、「虫明焼が伝える京の伝統文化 –京焼の技と意匠、茶陶の美意識- 」
という演題で、茶道資料館学芸員・橘倫子講師が講演されました。
私・蓼純が聴きたいのは、ポスターの 曳舟水指（ひきふねみずさし・引舟水指） です ☆
「楽焼として引舟の水指、香合が造られている、代々伝わってきた形。
この形が何からきているのかと言うと、
舟頭が雨の中を笠と蓑を付けて、舟を引っ張っている形です」
と、橘倫子講師が解説されました。
舟頭（舟引き人夫）が、陸から高瀬舟を綱で引いている様子を、写しているんですね。
水指の水で川を、連想させているのかもしれません。
水指の形が、笠と蓑を付けた舟引き人夫だということは、解りました。
ただ、本歌の楽焼の引舟水指も、胴部分が真っ直ぐ（垂直）に立ち上がっているのでしょうか？
舟を引いているのなら、胴部分（舟引き人夫の体）が斜めになるはずです。
舟引き人夫が垂直に立っているため、人夫の向こうにあるはずの、高瀬舟が想像できません。
私・蓼純には、 「舟引き人夫水指」 にしか見えません ☆
まあ、名前だから仕方がないですね。
「美子」 という名前の女性でも、あまり美しくない子もいました ☆
ただ、ポスターにするだけあって、とても良い水指です。
前回の〔追記〕でも、お知らせいたしました通り、展示会の図録・「むしあげ」が出ています。
［図録・むしあげ］５４頁３７図には、虫明焼 引舟文茶碗が載っています。
この写真を見ると、高瀬舟文茶碗ではないのか、と思われる方もいると想いますが、
１３３頁３７図を見ると、撫四方（なでしほう）にした他の面に、引き舟の様子が描かれています。
これは、名前通り引舟文茶碗です ☆
このように、 ［図録・むしあげ］ は、違う角度からの写真が多くあって、解説文も充実していますので、
ぜひ一冊、手元に置かれることをお薦めいたします。
高瀬舟といえば、落合町（現 岡山県真庭市）には、舟の形をした 「高瀬舟羊羹」 があります。
すこし日が経って砂糖が結晶し、表面が白くなったときが食べごろです ☆
それに、森鴎外の 「高瀬舟」 という短編小説があります。
私も、遠い昔に読んだ記憶があります。
人や物資を運ぶのに、高瀬舟が多く使われていた時代でした。
次に、初代清風与平の磁器展示品について、私・蓼純の思いを少しだけお話いたします。
個人蔵となっている作品が多いので、直接の指摘にならないように、全体的に話していきます。
一昨年に、岡山県立美術館に展示されたときも、それとなく異を唱えたのですが、
「於明浦清風造」と染め付けた清風作の磁器染付、赤絵、金襴手は虫明焼ですか？
私・蓼純は、「虫明（焼）じゃあ ねえじゃろお。京都で造ったんじゃろお！」と、思っています。
初代清風与平が京都から虫明に来たのは、弘化４年（１８４７年）３月です。
その年の１０月には、京都に帰っています。
短期間に磁器が焼ける窯を造って、これほど上手（じょうて）の磁器を虫明で制作できたのか？
半磁器（半陶半磁）の様なものしか、焼けなかったんではないのか？
と、いう疑問が当然わいてきます。
磁器を生産できる窯も、磁器の原材料もない虫明に来て、約半年の短い間に窯を築いて、
京都と全く同じ磁器を、この時代に虫明の地で造れるはずがありません。
茶道資料館の学芸員・橘倫子講師も、
「他の藩窯などを見ていると、二年ぐらい場所を変え、窯を変え、原材料を変えて、
何回も試し焼を繰り返して、ようやく磁器生産にたどり着いたというような藩もあるぐらい、
磁器があっという間に、すぐできるかと言うとそうではない。」
と、京都なまりで解説されました。
ここで、誤解のないように言っておきますが、茶道資料館の学芸員・橘倫子講師は、
「於明浦」と染め付けた清風作の磁器展示品は、虫明で制作したという見識です。
県博の重根弘和学芸員が、ギャラリートークで、
「陶器は京都で造ったものと、虫明で造ったものは、質感が異なるが、
磁器は、京都で制作した作品と、虫明で制作した作品は全く同じである。」
と、解説されました。
これって、やはり、可笑しいですよね（？）
虫明で初めて磁器を造って、京都と瓜二つの作品が出来た。
不自然極まりないです。
清風が、虫明で造った焼きものを見てみます。
［日本やきもの集成 ９］ ３３ページ１２４図に虫明 染付 硯屏が載っています。
この磁器の硯屏も、１１０ページ４２図を見ていただければ判るように、
「於虫明清風造」と染め付けています。「於明浦・・・」とは書いていません。
それに、京都で制作した作品のように、スッキリしたものではありません。
胎土も、半磁器（半陶半磁）です。
もう一点、太田巌コレクションの菓子鉢を見てみます。
［図録・むしあげ］１０ページ１図に載っています。
陽印・「琴浦」印を捺した陶器ですが、赤色釉で「於虫明・・・」と上絵付しています。
これも、「於虫明・・・」と書いており、「於明浦・・・」とは書いていません。
先にも話しましたとおり、清風が虫明に居たのは、築窯に要した期間を含めて僅か半年間です。
同時期に虫明で造ったのであれば、地名表記が「於虫明」、「於明浦」とは乱れないでしょう。
私・蓼純の考えを述べさせていただきますと、
陽印・「琴浦」印を捺した陶器と、磁器に「於虫明・・・」と書いたものは、虫明で制作しているが、
「於明浦・・・」と、書いている作品は、京都で清風与平が制作したものである、と考えています。
短期間で京都とか、有田、波佐見のような良質な磁器が、他の窯で焼けなかったように、
虫明でも良質な磁器が焼けなかったことは、容易に想像できます。
「於明浦・・・」と記された磁器は、京都製のニセものであると言ってしまえば、にべもないですが、
そうではなくて、伊木三猿斎が、京都の清風与平に注文し造らせた、と考えます。
それでは、いつ京都で造ったのか？
私・蓼純は、嘉永五年（１８５２年）の、五月頃に京都で造ったのではないか、と思っています。
なぜかと言うと、
［図録・むしあげ］２４ページ１５図に、制作年の入った「染付仙人猿文鉢」が載っています。
高台内に、「嘉永五壬子 仲夏於明浦 洛陽清風造」と染め付けています。
嘉永五壬子（１８５２年みずのえね） 仲夏（ちゅうか・旧暦５月）於明浦（虫明） 洛陽（京都）です。
また、池上千代鶴（いけがみちよづる）は、［虫明焼の記録］２９ページに、
京都製の贋物として、「於明浦 清風造 壬子 夏日」の染付銘を載せています。
これは、銘が載っているだけで、作品は載っていないので皿なのか、鉢なのかは分かりません。
しかし、嘉永五年（１８５２年）夏の制作年が入った清風作品を、池上千代鶴が見たということです。
池上千代鶴が京都製のニセモノだ、と指摘しているように、
厳密にいえば、京都で造った作品に、「於明浦・・・」と入れれば、「京都製のニセモノ」です ☆
なお、池上千代鶴は、京都の清風家にも尋ねていますが、
「京都五条坂の清風家の諸説を貰ったが、この嘉永五年説をキッパリ否定、
清風の虫明行きは弘化四年一回のみであると言い切られた。」
と、［虫明焼の記録］３２０ページに、記しています。
それでは何故、京都製の清風与平作品として販売すれば良いのに、
「京都」と比べると、無名に近い「明浦」と入れる必要があったのか？ ということです。
それは、伊木三猿斎が、京都の清風に注文して造らせた。と、いう以外には考えられません。
ダラダラと長くなってしまいましたが、逆のパターンについて話しますと、
例えば、黒井一楽が、西大寺の岡崎若松の縁故者に頼まれて、
「さいだいじ」と「一楽」銘（印）を捺した作品を、虫明で焼いたことがあります。
「於明浦 清風造」と染め付け銘の入った作品も、このケースに近いのではないかと思います。
お茶の人はいいのですが、虫明焼の好きな方で、清風作品の展示をみて疑問をもった人が、
「違和感が有ったのは、自分だけでは無かった」と、感じていただけたなら幸いです。
さらに言えば、弘化四年に清風が虫明で制作した磁器も、火計り（ひばかり）だと思っています。
今回は、蓼純（たでじゅん）Ｃｏｌｌｅｃｔｉｏｎの頁は更新していません。
私がもっている虫明焼・初代清風与平作の蓋物（菓子器）を、ＵＰしたいところですが、
我田引水だと言われそうなので、今回は見送っておきます ☆
例えば、黒井一楽が、西大寺の岡崎若松の縁故者に頼まれて、
「さいだいじ」と「一楽」銘（印）を捺した作品を、虫明で焼いたことがあります。
「於明浦 清風造」と染め付け銘の入った作品も、このケースに近いのではないかと思います。
と、上に書きましたところ、知人から意味不明（解り難い）と言われてしまいました。
つまり、
・ 虫明から依頼（注文）があったので、清風与平が京都の窯で、
「虫明」「清風」（於明浦、清風の染付）と入れた作品を制作した。
・ 西大寺から依頼（注文）があったので、黒井一楽が虫明の窯で、
「西大寺」「一楽」（さいだいじ、一楽の印）と入れた作品を制作した。
この二件は、ほぼ同じケースだ。
と、言いたかったのです。しかし、稚拙な文のため伝わり難かったようです ☆
ご指摘ありがとうございました。
なお、「さいだいじ」銘（印）については、〔第３０回〕で お話しています。
〔また追記〕
県博の重根弘和学芸員がギャラリートークで、
「陶器は京都で造ったものと、虫明で造ったものは、質感が異なるが、
磁器は、京都で制作した作品と、虫明で制作した作品は全く同じである」
と、解説されたことを、上に書きましたが、このことは、［図録・むしあげ］にも記されています。
［図録・むしあげ］１１２頁下段に、「同じ作者が、同じ題材で制作したものであっても、
陶器の場合、京焼と虫明焼では釉薬の質感がことなる。」と記載されています。
また、［図録・むしあげ］１１３頁下段には、「磁器については、釉調や胎土から、
虫明焼と京焼を区別することは難しい。」と記載されています。
〔第７３回〕 ２０１９.０３．１６
ご無沙汰しています。前回の更新から、一年近く経ってしまいました ☆
前回は・・・・・
岡山県立博物館（県博）の虫明焼展のことを、お話したんでしたね ☆
曳船（引舟）水指と、清風与平の磁器展示品について、でした。
続いて、真葛香山について、お話しする予定だったのですが、時機を逸しましたので、
今回はガラリと変わって、今までとは、少し違う虫明焼についてです。
題して、「こんな虫明焼、あんな虫明焼」です ☆
< 写真は、糸瓜形花入れ 「むしあけ」、「枕流」印 高さ２９㎝ >
上の写真をご覧になってください。
内側は灰釉、外側は灰釉と鉄釉の掛け分けにした、虫明焼らしい花入れ（花瓶）です。
灰釉と鉄釉のコントラストが爽やかですし、窯変（ようへん）も出ています。
形は、糸瓜（へちま）を写しています。
銘（印）は、底部に「むしあけ」と「枕流」印（幕印）の併押です。
誰が作った花入れ（花瓶）か、お判りになりますか（？）
銘（印）の枕流（ちんりゅう）とは、古美術商の桐野豊造（きりのとよぞう）のことです。
桐野豊造（枕流）は、伊木家にも出入りしていた美術商です。
池田侯爵家御藏品入札のときは、札元を務めています。
桐野豊造（枕流）については、桂又三郎著・［備前虫明焼］の２０５ページに、
「沈流 岡山市の古い骨董商で、三猿斎にも出入りしていた桐野豊造氏のことで、
号を沈流・小猿、晩年には宗蓬ともいい、晩年虫明焼の茶陶を焼いた。」 （原文のまま）
と、記されています。
池上千代鶴著・［虫明焼の記録］１７７ページにも、説明が有りますので、抜粋してみます。
「沈流銘の茶器 伊木三猿斎の出入りの道具商であつた棲鳳堂、宗蓬、桐野豊造は
香洲在世当時間口の窯で茶人好みの陶器を焼かしめた。中には沈流と号した銘款ものも
残って居る。旭川京橋の上手に居を構へて居った時代であろう。」 （原文のまま）
と、記されています。
［備前虫明焼］ ［虫明焼の記録］ どちらも「枕流」を「沈流」と誤植しています ☆
漱石枕流（そうせきちんりゅう）の「枕流」です。
「香洲在世当時・・・・・」と書かれています。
香洲とは、言うまでもなく、森香洲（もりこうしゅう）のことです。
良い花入れ（花瓶）です。
古美術商の桐野豊造（枕流）は、轆轤（ろくろ）の名手だったのか？
そうでは、有りません。
轆轤（ろくろ）は、香洲が挽いています。
釉薬（ゆうやく）も、香洲が掛けています。
香洲が轆轤挽きしたものに、枕流が手を加えています。
この花入れ（花瓶）で言うと、正面の切込みです。
北大路魯山人（きたおおじろさんじん）も、ロクロが引けなかったため、
腕の良いロクロ師を使って、最後の仕上げと絵付けだけをしていました。
白洲正子（しらすまさこ）は、［風姿抄］に
「彼（魯山人）が、ちょっと手を触れただけで、みるみる形がしっとり生気を帯びる瞬間を私は何度も
目撃したことが有った。」
と、書いています。
そう言えば、私・蓼純も、某備前焼作家の工房に行ったとき、同様の事を、聞いたことが有ります。
魯山人が備前に来た時、
「備前焼作家がロクロ挽きしたもの（粘土）に、魯山人が手（掌）で少し押さえたら、面白い形になった」
と、話されていました。
魯山人の場合は、ロクロ挽きしたあとに、魯山人が触れたら良くなったようですが、
枕流の場合は、香洲が造ったものに手を加えることによって、悪くはなっても良くはなっていません。
枕流が、本来の良さを壊しています。
この糸瓜形花入れは、正面を外してみると、森香洲らしい素晴らしい作品です。
ただ、正面から見ると、なにか違和感が有ります。
枕流が、正面の切込み（右側）に手を加えた、わざとらしさが見えます。
枕流銘（印）のものは、極めて少ないのですが、野崎家塩業歴史館で水指を見たことがあります。
野崎家は、展示品の写真撮影が可ですので、撮影させていただいた記憶があるのですが・・・
いまパソコンの中を見ましたが、写真が残っていないようです。
当てにならない記憶をたどりますと、野崎家の水指も森香洲が作ったものに、
枕流が手を加えたことによる、不自然さがありました。
その不自然さとは、水指の耳を長くしすぎていた為だ、と記憶しています。
そういえば、絵付けも変だった。 かな（？）
ほかに枕流のものは、手鉢（てばち・菓子器）を某所で見たことが有ります。
これは、香洲の作った手鉢の持ち手を、底（見込み）に付くまで押さえていました。
手鉢の手が底に付いていては、持ち手の意味が無くなってしまいます ☆
粘土（土）の状態では形が整っていても、窯に入れた時に、窯（火）の悪戯で持ち手が垂れた。
という失敗は、陶芸教室などで経験されている方も多いと思います。
でも、これは、窯の悪戯ではありません。
枕流の、悪戯です ☆
故意に、持ち手を押さえつけたものです。
作為が過ぎると、嫌味しかありません。
「蓼純Ｃｏｌｌｅｃｔｉｏｎ」のページに、枕流銘の、酒盃 香合 と蓋置の写真を載せました。
これらの作品も、香洲が作ったものに枕流が悪戯したものです、ご覧になってください。
古美術商と言えば、横井米禽（よこいべいきん・１８８６～１９４１）が造った虫明焼があります。
横井米禽、ご存知だとは思いますが、すこし説明をしておきます ☆
本業は、古美術商ですが、本業の傍ら作陶にいそしみ研究・研鑽を重ねました。
大正１３年（１９２４年）には、東雲窯（名古屋市）を譲り受けて、米禽焼として陶業に専念します。
本業（古美術商）で、多くの名品をみているため、その作品が、どれも茶陶の理にかなっており、
現在も多くの人から、高い評価を受けています。
「多くの人から、高い評価を受けています」と言いましたが、
逆に、低い評価をされる方もいるわけです ☆
例えば、読売新聞社発行の［Ｔｈｅ骨董］には、「今世紀最大の贋作師」と書いてありました。
「米禽」印を、捺していない作品がありますからね。
しかし、少なくとも、私・蓼純のもっている抹茶碗は、虫明焼の贋作とは言えません。
「米禽」印は捺していないのですが、長方形の中に「虫あけ」と書いた印を捺しています。
米禽が捺した、漢字とひらがなが混ざった・「虫あけ」印は、虫明焼には存在しません。
虫明焼の銘（印）は、ひらがなの「むしあけ」、「むしあげ」 または、漢字の「虫明」印です。
「虫明焼を写した」ということを示すために、米禽はあえて、「虫あけ」印を捺したのだと思います。
薄造りで、虫明焼によく似せていますが、虫明焼好きの私が見ると、やはり微妙に違います ☆
これは、他県の人が岡山弁を話しても、岡山県人が聞くと不自然だと感じることと同じです。
もちろん 土（粘土）も釉薬（ゆうやく）も違うので仕方ないのですが・・・
この米禽作の抹茶碗の写真も、「蓼純Ｃｏｌｌｅｃｔｉｏｎ」のページに、載せておきます。
続いて・・・ ですが、思い付きをお話していますので、まとまりが無く長くなってしまいました ☆
今回は、これで終わらせていただきます。
次回は、「あんな虫明焼、こんな虫明焼」の続編を、お話したいと思います。
続編ですので、出来る限り早く更新する予定です ☆
〔追記〕
写真を「蓼純Ｃｏｌｌｅｃｔｉｏｎ」 のページに載せていたのですが、既に削除しましたので、
ここに写真を追加いたしました。
まずは 「香洲」-「枕流」作の酒杯です。
< 酒盃 「香洲」-「枕流」作 > < 酒盃 枕流が高台を削っている >
続いて 「香洲」-「枕流」作の香合です。
< 瓢箪形香合 「香洲」-「枕流」作 「枕流」印 > < 瓢箪形香合 上部の形、鉄釉（銹絵）が不自然 >
こちらは、横井米禽作 虫明焼写し抹茶碗です。
< 横井米禽作 虫明焼写し抹茶碗 >
銘（印）は 漢字とひらがなで 「虫あけ」
草原と、蝶を描いています。
横井米禽は他の作品でも よく蝶をとばしています。
森英恵（HANAE MORI） と 米禽は、蝶がお好きなようです ☆
〔第７４回〕 ２０１９.０７．２２
今回は、前回にお話しいたしました・「こんな虫明焼、あんな虫明焼」の続編です。
早く更新するつもりだったのですが、遅くなってしまいました ☆
発行部数が少なく手に入りにくい資料ですが、［古虫明・現代虫明焼］の４２頁をご覧ください。
「菓子器 半泥子絵付 岡本英山」の写真が載っています。
そうですね、［古虫明・現代虫明焼］の写真を ここに転載させていただきます。
＜虫明焼菓子器 半泥子絵付 岡本英山＞
川喜多半泥子（かわきたはんでいし）は、皆様よくご存知だと思いますが、
半泥子は、百五銀行の頭取、津市（三重県）の市会議員、三重県会議員などを務められた人です。
趣味だった陶芸は、５０才を過ぎてから本格的に作陶をしています。
豪商の家に生まれ、財力が有るので、売却目的ではなく、趣味として自由奔放な作品を作りました。
陶芸のほか、書や画も行なっていたので、「東の魯山人、西の半泥子」と言われることも有ります。
「東の・・・、西の・・・」と言っても、愛知県と三重県近いですよね ☆
川喜多半泥子は、虫明立場の岡本英山の窯に、昭和１５年（１９４０年）に、
金重陶陽（かなしげとうよう・１８９６～１９６７）などと一緒に来ています。
上の写真・菓子器は、そのときに絵付けをしたものだと思います。
［古虫明・現代虫明焼］の４２頁に、「菓子器 半泥子絵付 岡本英山」と記されています。
ですから、英山が造った菓子器に、半泥子が絵付けのみをした、と言うことですね。
土（粘土）からロクロ挽きして作るほどの、時間的余裕が無かったのでしょうか（？）
実は、私・蓼純がもっている鉢の絵付けと、この半泥子の絵付けが、よく似ていると感じていたので、
半泥子に詳しい・某美術館（博物館）の女性学芸員が、岡山に来られた時に写真を見ていただきました。
蓼 純 「先生、この本の菓子器と、絵付けがよく似ていると思うのですが、見ていただけますか（？）」
学芸員 「私、みても判らないです・・・」
（写真を出す）
学芸員 「・・・」
蓼 純 「違いますか・・・ ☆」
学芸員 「いいえ、判らないです・・・」
と、やんわりと否定されたことがありました ☆
そうです 何点か絵付けをしただけですから、市場に出ることは まず無いですよね ☆
と言うことで、気を取り直して、
つぎは、岡本錦朋（おかもときんぽう・１９０７～１９９９）です。
岡本金朋（岡本金一郎）は、岡山市出身の彫刻家です。
東京美術学校彫塑科を卒業後、北村西望（きたむらせいぼう）に師事しています。
日展審査員や、評議委員などを歴任しました。
岡山駅前の「桃太郎像」、西川緑道公園の「平和像」、そして総合グランドの「人見絹江像」が有名です。
錦朋の備前焼作品は、陶板とか花入れ（花瓶）に、横たわった裸婦を彫ったものを時々見ます。
錦朋は備前焼だけではなく、虫明でも抹茶碗を焼いています。
銘（印）は、「むしあけ」印と、「錦朋」の彫り銘です。
私・蓼純も、錦朋が作った虫明焼抹茶碗を三点もっているので、「蓼純Ｃｏｌｌｅｃｔｉｏｎ」の頁に載せています。
土（胎土）、釉薬（ゆうやく）の感じから、黒井千左の窯で焼いたものだと思います。
裸婦を彫った抹茶碗も載せていますが、釉薬を掛けているので、よく見ないと裸婦だと分かりません。
抹茶碗ですので、あまりはっきりと裸婦だと分からない方がいいかもしれません ☆
よろしければ、ご覧ください。
つぎに、備前焼作家の虫明焼について、お話しいたします。
備前は虫明と近いことも有り、備前焼作家も虫明によく来ています。
また逆に、岡本英山（おかもとえいざん）も、備前焼に数年従事していました。
英山の轆轤（ろくろ）技術に、備前焼作家が驚愕した、と伝えられています。
明治備前を代表する陶工（陶芸家・作家）・久本葛尾（ひさもとくずお）も、もちろん虫明焼出身です。
それでは、青備前で有名な・藤原楽山（ふじわららくざん）作の虫明焼抹茶碗です。
銘（印）は、「むしあけ」印と、「楽山」の彫り銘です。
この抹茶碗は、二代藤原楽山作です。
某虫明焼研究・愛陶家によると、
二代楽山が、虫明の東原泥多（ひがしはらでいた）の窯に来た とのことです。
二代藤原楽山（藤原六治・１９１０～１９９６）は、初代楽山の三男として生まれました。
早くから父・楽山に師事して陶技を習い、
昭和５年（１９３０年） 初代楽山が亡くなられてから、二代楽山を襲名しています。
昭和２９年（１９５４年）に、岡山県重要文化財になりました。
この楽山作の抹茶碗も、「蓼純Ｃｏｌｌｅｃｔｉｏｎ」の頁に載せています。
備前焼は無釉焼き締めですので、好対照をなす・虫明焼（風）を、作る備前焼作家も何人かいます。
例えば、西村春湖（にしむらしゅんこ）
釉薬（ゆうやく）が掛かった、煎茶碗をよくみかけます。
オークションなどでは、「虫明焼煎茶碗 西村春湖作」と、記されていますが、
先の「錦朋」とか「楽山」とは違って、「むしあけ」印が入っていないので、備前窯で、釉薬を掛けて焼いたものだとおもいます。
春湖は京都に生まれ、青山春光（あおやましゅんこう）、諏訪蘇山（すわそざん）から、陶法を学びました。
明治４２年（１９０９年）に、備前市伊部に築窯しています。
明治天皇に備前焼を献上、展覧会においても、多くの賞を受賞しています。
私・蓼純は、春湖作の菓子鉢を、もっています。
内側に、鉄釉（銹絵）で竹の絵を描いて、白濁釉を掛けたものです。外側は、無釉です。
上から見れば虫明焼風ですが、春湖の彫り銘だけで、「むしあけ」印はありません ☆
これも、「蓼純Ｃｏｌｌｅｃｔｉｏｎ」の頁にＵＰしておきます。
そして、松田華山（まつだかざん）
華山は、久本葛尾の孫にあたります。三代華山のことです。
煎茶器に、良いものが多いです。
岡山公園（後楽園）などを描いた・絵備前の煎茶器もよく見かけます。
華山も、虫明焼を作っています。
煎茶碗は、「華山」印のみですが、急須には、「華山」印と「むしあけ」印が入っています。
「蓼純Ｃｏｌｌｅｃｔｉｏｎ」の頁に載せたいのですが、どこに置いたかな・・・（？）
私・蓼純は、虫明焼を売ることはないのですが、実は盗難にあったことがあります。
虫明焼愛陶家の中にも、悪人がいるということを、この歳になって教わりました ☆
あれれ、脱線してしまいましたので、終わりにいたしますか（？）
ほかに備前焼作家では、小西陶古（こにしとうこ）の倣虫明焼茶碗と箱書きしたものを見たことがあります。
信楽焼でも、高橋楽斎（たかはしらくさい）などが、虫明焼の代表作・「月に雁の絵水指」を作っています。
梅雨が明けたら本格的な暑さに向かいますので、ご自愛ください ☆
〔追記〕
「私・蓼純は、虫明焼を売ることはないのですが、実は盗難にあったことがあります」
と、書いたのを見て 知人の警察官を定年退職した人から、電話をもらいました。
「犯人が、分かるのではないか（？）」 と言われましたが、犯人は分かっています ☆
事件には、したくなかっただけです ☆
ほかの方にも ご心配をお掛けしました。
〔また追記〕
二代楽山が、虫明窯に来た と、お話いたしました。
何度か虫明に来たのでしょうが、共箱に日付の入ったものがあります。
虫明の里 於作之 昭和五十三年五月と記されていました。
〔第７５回〕 ２０２２．０５.０７
大変 大変 大変 ご無沙汰しています ☆
暑い ! 暑い ! 寒い ! 寒い! と言っていたらすぐ二年、三年と経ってしまいました。
今回は、生活雑器であった虫明焼の徳利についてお話をしてみたいと思います。
ガラス瓶、紙パックなどの出現で、今は 通い徳利としての需要は全くなくなりました。
せいぜい見立て花入れ（花瓶）ですので、用の美とは言えませんが・・・
先ずは、虫明焼の初期に造られた徳利です。
虫明焼は〔第１回〕でもお話いたしました通り、初期の虫明焼と言っても約２００年前です。
虫明焼は、文政元年（１８１８年）頃に、地元の今吉吉蔵（いまよしよしぞう・１７８４～１８６６年）が
虫明池奥に窯を築いたのが始まりだという説が有力ですし、真説だと私・蓼純は理解しています。
一八一八年というのは、数字も縁起の良い末広がりですし 覚えやすいです ☆
また、虫明焼に縁の深い伊木三猿斎（いぎさんえんさい・１８１８～１８８６年）が生まれた年でもあります ☆
そうです、伊木三猿斎が生まれたのが、文政元年（１８１８年）です。
虫明焼は伊木家のお庭窯として、いまから３００年前の享保年間（１７１６～１７３６年）に創窯
と言われる方もいますが・・・
伊木三猿斎が生まれる１００年前に 虫明でお庭焼を本当に焼いていたのか というと大いに疑問です。
虫明焼の創窯期は当然茶陶ではなく、徳利、鉢などの生活雑器・生活日用品を焼いていました。
今回は、生活雑器のなかから、徳利をお見せしたいと思います。
虫明焼に詳しい お茶人の方も、「むしあけ」印と 作者の銘（印）が入った共箱入りの
茶陶以外は ご覧になられたことがない方が殆どだと思います。
そんな茶陶しか ご存知ない方にも、入っていただきやすいものをＵＰいたしました。
＜虫明焼徳利 高さ22.5cm＞
この徳利は、天保年間（１８３０～１８４４年）に造られたものだと思います。
初期の虫明焼は、野田焼の陶工（陶芸家・作家）によるイッチン描きしたものが多く残っています。
書かれている文字は、「圓張（えんばり）」です。
反対側には、「坂本屋」という屋号が入っています。
圓張（えんばり）とは、今の岡山県瀬戸内市邑久町豊原にある地名です。
（旧・岡山県邑久郡邑久町豊原字圓張）
ブルーライン・瀬戸内ICを降りたあたりです。
圓張小学校跡が畠山製菓豊原工場で、おかき等を製造しています。
「圓張」 「坂本屋」 とイッチン描き（筒描き）をしています。
虫明焼の創窯時には、今吉吉蔵の窯に野田焼の陶工（陶芸家・作家）・兵右衛門が来ていました。
兵右衛門のことは、［図録・揖保郡三窯］ 野田焼関連年表と展示関連年表にも下記のとおり記載されています。
・ 天保 ４年（１８３３年） 龍野焼物師兵右衛門（野田焼陶工）、虫明焼・池奥窯（岡山県）に招かれ指導にあたる。
・ 天保１３年（１８４２年） 虫明焼の贋備前焼事件の関与者の一人として、龍野焼物師兵右衛門の名があがる。
以前にも お話いたしましたが、初期の虫明焼は野田焼の影響を大きく受けています。
イッチン描きも、野田焼の陶工（陶芸家・作家）がよく使った技法です。
イッチン描きと言うのは、竹の筒に釉薬（白泥）を入れて、上から押して圧力をかけ
竹の横にあけた小さな穴から出た白泥で、字や絵・模様を描く製法です。
白泥で描いていますので、筆で描くより厚みが出ます。
下手な説明で、イメージできませんか（？）
子供のころに竹で作った水鉄砲で遊んだ方には、理解しやすいと思いますが・・・
イッチン描きについて詳しく知りたい方は、ネットで検索してみてください ☆
もう一点 イッチン描きの徳利を載せておきます。
＜虫明焼徳利 高さ36.0cm＞
掛分け徳利より、４センチから７センチくらい背が高いです。
そして、「圓張」と書いてある徳利をもう一本。
＜虫明焼徳利 高さ25.5cm＞
「圓張」 反対側には「北七」 と鉄釉で書いています。
この徳利は、最初の「圓張」とイッチン描きした徳利より時代は下ります。
他の虫明焼徳利を見ていただきましょうか。
＜虫明焼徳利 高さ25.5cm＞
「虫明」 反対側には「山口商店」 と鉄釉で書いています。
首を鉄釉に浸けています。
＜虫明焼徳利 高さ23.0cm＞
こちらの徳利は、ひっつき（飛び込み）があります。
雑器です。 窯の中で窮屈に詰められて焼成された結果です。
「虫明浦」 「升屋」 「貮千百貮拾一番」 と番地も書かれています。
「升屋」と書かれた徳利は、
瀬戸内市 中央公民館の太田コレクションにも展示されています。
［邑久町史・文化財編］ １７５ページ ２７.古虫明鉄釉大徳利です。
＜虫明焼徳利 高さ31.5cm＞
高さが31.5cmあります。
水が２リットルのペットボトル２本以上・4,330ml入りました ☆
虫明焼の徳利では最大級だと思います。
これは、私・蓼純が若かったころに、玉野市の骨董屋（古美術店）で見つけたものです。
「神崎」 裏側は「山中屋」 と鉄釉で書いています。
現在は岡山市東区神崎町 （旧 西大寺市）
古い虫明焼は、土（胎土）、釉薬（ゆうやく）、姿（出来）全部いいです。
飾り気も衒いもない実用本位の生活雑器です。
認めてもらいたい などという邪念が陶工に全くありません。
需要に応えて、ただ必要なものを造っただけです。
虫明焼徳利に慣れていただいたところで、つぎは字が書かれていない徳利です。
上の写真は二合徳利。高さは25ｃｍくらいです。
釉薬のかけ方 口づくりが微妙に違いますが、いずれも手取りは軽いです。
一合徳利、二合徳利は燗徳利ですので、現在も需要が有るのかも知れません。
最後は、皆様お馴染みの虫明焼掛分け徳利です。
掛分け徳利については〔第１０回〕でも お話いたしました。
＜虫明焼掛分け徳利 高さ31.0cm＞
四君子（蘭・竹・菊・梅）を 絵付けしたものが多いです。
これは菊が描かれています。
茶陶ではない虫明焼の美しさを 少しは感じて頂けたかと思います。
えっ・・・ やはり茶陶でないと 虫明焼らしくないですか（？）
それはそれで良いのだと思います、私・蓼純の好みを押し付けるつもりはありません ☆
「蓼純Ｃｏｌｌｅｃｔｉｏｎ」のページに他の徳利の写真もＵＰしていますので、
よろしければ ご覧ください。
今回は徳利を見ていただきましたので、
次回は筒花入れ、コネ鉢、あるいは片口などの お話をしてみたいと思っています が、
いつのことになりますやら・・・ ☆